土を踏み締める音
木々の葉が揺れる音
ローブの装飾同士が当たり合う音
ミシェルをリリーたちの元に向かわせたリャーシャは、他の教師に軽く事情を説明した後、森の見回りを行っていた
同じようなイレギュラーが起こっていないか、生徒たちの身に危険が無いかを確認しに向かっていたのだ
南側は森の外に向かって行く方向であるため、リャーシャはまず西の見回りを行い、現在は北の見回りを行っている最中
西は特に問題無し
強いて言うならば、途中で生徒と鉢合わせてしまい誤魔化すのに手間取ったことだろうか
例え、イレギュラーな事態が起こっていたとしても、生徒の混乱を招かないよう同例が他所でも確認されない限りは生徒たちに秘匿する必要がある
誤魔化すときや嘘を吐くときにテンパってしまうリャーシャは、それはそれは怪しまれたことだろう
────そして、今、そんなリャーシャの眼前には、
リリーたちの元に現れた魔物よりも、二回り程大きな魔物が鎮座していた
南は森の外に近付く一方、北はより深層に向かって行く
恐らく、この魔物は北から比較的浅い層に南下してきた魔物であり、リリーたちを襲った魔物よりも幾許か強力な種だ
───うるさい、とにかくうるさい
涙目になりながら叫び、ここに居るはずのないレオンに助けを求めているリャーシャに、予備動作無しでその太い尻尾が振られた
ビビるとすぐに高威力の魔術を放ってしまうリャーシャ
そんなリャーシャはすぐに防御魔術を展開したかと思えば、次の瞬間には魔物の左半身が消えていた
───虚無
いつかの新学期実技試験において、リャーシャが的そのものの存在を消し去った魔術である
上位魔術を即時無詠唱発動
しかもこの威力
恐るべし魔術師である
─────否、そもそも予備動作無しの攻撃に対し、即座に防御魔術を展開出来ることがおかしいのだが
ちなみに、先程の攻撃は普通の魔術師では対応出来ない速度であるが、戦闘能力を認められたことによりその座に就いた《ファイナリスト》は、余裕で防御することが出来る
無論、研究能力を買われて《ファイナリスト》になった者は防御不可である
────やはり、戦闘特化の《ファイナリスト》がおかしいだけなのだ
半身が消失し、息絶えてゆっくりとこちらに倒れてくる魔物
重い躯体のせいでとてもゆっくりだったにも関わらず───
油断していたリャーシャは、あっさりとその下敷きにされた
レオンの〝リーシャ〟という言葉に異常に反応する人物
短い紫髪に碧色と紺青色のオッドアイの少年
少々顔色の暗い不健康そうなその少年は、レオンよりも年下であり、リーシャよりもほんの僅かに年上だ
少年のその反応を見て、レオンはしまったと言わんばかりの表情になる
レオンは、杖を頭上に掲げ、数多の闇属性魔術を発動しようとしている少年に、レオンが叫ぶ
レオンはそうボソリと呟く
リーシャへの気持ちが強い少年にリーシャの元へ向かわせ、どうにか自分が助かるようにしているのだ
この作戦が成功すれば、レオンは殺されずに済む
しかし─────
要は、魔術自体がその場に応じて対応を変える───
〝考える〟という行為をする魔術だということ
歴史に名を連ねる偉人たちがその叡智を結集しても創ることが出来なかった〝意思を持つ魔術〟
実現不可の魔術、幻の魔術、未来永劫完成しない魔術───
そう呼ばれるようになった魔術を───少年は、リーシャの為だけに創ろうとし⋯⋯⋯とうとう実現させてしまった
その魔術の術式情報や研究成果を国に譲り渡すだけで、一生遊んで暮らせるほどの大金が手に入るほどの重大事項
少年の執念と努力と才能に驚くだろうか
───否、もう呆れるしかないのだ













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。