カラオケの誘いって、こんなに悩むもんだったっけ?
あなたの下の名前はスマホの画面に映るグループLINEの通知をじっと見ていた。
歌は、嫌いじゃない。けど得意でもない。
それに——
バチバチに歌うまくて、デュエットもハモリも完璧にこなす子だった。
彼女が歌えば周囲が絶賛して、彼女が笑えば私も楽しかった。
……それを、私は知っている。
ふと背後から声がして、ビクッとなる。角名倫太郎だ。手には、片手サイズのジュースボトル。
角名が気だるげに笑う。その瞬間、また通知が鳴った。
角名がにやっと笑う。「奢り」って言葉の威力は、家庭環境バチバチな私には強すぎる。
角名はもう一つの通知を指さした。
そこには、音符とウィンクのスタンプも添えられていた。
……この人、ほんと飾らないというか、期待してないというか、ある意味ズルい。
角名がひらっと手を振る。
その後ろで、スマホの通知がもう一つ。
でもその時にはもう、あなたの下の名前の足は集合場所に向かっていた。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!