放課後、六奏耀家のリビングはやけに静かだった
母は買い物、父は仕事
他の義弟たちは友達と遊びに行っていて
家にいるのはらんと那津だけ
らんはテーブルで課題をしていた
静けさに集中できると思っていたが
二階から足音が降りてくる
姿を現した那津は、袋を片手にソファへ腰を下ろした
那津は袋からコンビニのクレープを取り出し
包装を剥ぎながらじっとらんを見ている
何か言いたげだ
にやりと笑い、ひと口大きくかじった
らんは小さく息を吐き、再びノートに視線を落とす
だが、那津の視線は消えない
淡々とした言葉
その裏に、からかうような軽さが混じっている
わざとらしく笑いながら
那津は残りのクレープを食べきった
らんはペンを握る手に力を込めた
喉の奥に言葉が引っかかるが、結局、何も返せない
立ち上がった那津は
ゴミをテーブルに置いたまま二階へ戻ろうとする
途中で振り返り、少し声を低くして言った
階段を上がる足音が遠ざかる
らんは机の上のゴミを見つめ
さっきの言葉の意味を測りかねていた
——試されている
そんな直感だけが、胸の奥に残った












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!