1945年。クレムリン、赤の広場。
かつての独裁者の肖像は全て引き剥がされ、代わりに掲げられたのは「自由な論理」を象徴する新しい旗。
何万という群衆が見守る中、最高元帥の軍服に身を包んだ二階堂ヒロがマイクの前に立つ。
背後には、同じくNKVD長官になったユキと、群衆の中に混ざる一人の少女としてヒロを支えるエマ。
ヒロは胸ポケットの赤い万年筆を一度だけなぞり、凛とした「私」の声で語り始めた。
「……親愛なる市民諸君。かつてこの国には、思いやりを欠いた不協和音が満ちていた。」
広場に集まった人々が息を呑む。
「……正義の名を騙り、人々を『害虫』と呼んで切り捨ててきた暗黒の時代は、今、終わった。……私はかつて、そのシステムの『歯車』だった。だが、一人の少女のたった一つの意見が、私の固定概念を根本からひっくり返してくれたのだ!」
ヒロは群衆の中にいるエマを誇らしげに見つめ、続ける。
「……今日から、この国は新しく生まれ変わる!……私が約束する『正義』は、煩悩による恐怖政治ではない!……誰もが自分の音を奏で、互いの不協和音を認め合える、真実の調律です。……そして何より、皆がお互いを認め合える国の独立を、ここに宣言する!」
群衆から地鳴りのような歓声が上がる。
ヒロは群衆の中の一人の少女を見つめた。
「……エマ。……本当に、これでよかったよな。」
その問いに、エマは「うん!」と頷いた気がした。
ユキは「……そうですね、ヒロ。今までで一番の調律になったんですよ」と微笑んだ。
その瞬間、4月の青空から、季節外れの、しかし美しく輝く雪が舞い落ちた。
それは、旧き時代を白く染め上げ、新しい世界を祝福する、優しく静かな「終わりの始まり」だった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。