お昼の私は、私じゃない。
あんなの、違う、絶対違う…
廊下を歩きながらまた否定する。
さっきのは私じゃない。
ちょうど校門を出た時
スニョン先輩は足を止めた。
私も同じように足を止めて一緒に空を見た。
それは私もだよ。
足を進めては戻りたくなる。
時間も季節も戻って、
もっと早くに出会ってたかった。
先輩の袖を引いてそう言った。
涙は堪えられなかった。
泣く私に先輩は困ったと思う。
告白にしては“付き合って“の言葉もなく、
“好きです“と、悲しそうに言ってしまったから。
私の手を力強く握って進む先輩は
何も言わずに家まで送ってくれた。
最後まで離したくなかった手は
空気が冷たいと感じるほど温もっていた。
バイバイ、と言ってから今日はすぐに家に入った。
こうもなるとは思ってなかった。
今日の私は私じゃない。
今日全部。そう、全部。
なんでこんなに溢れ出ちゃったんだろう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!