SIDE ↝ さとみ
ジェルが再び出て行こうとしたとき、るぅとが口を開いた。何故か嫌な予感がした。
予感は的中した。堪えていた何かが切れた気がして、俺は反論の言葉を探しながら口を開いていた。
出てきたのは子供じみた駄々だった。恥ずかしくなって畳み掛けるように言葉を放つ。
ムキになって、言い返す。歯止めが効かなくなって、背筋がぞっとするくらい冷たい言葉を、人を傷つけるための言葉を、父さんに向けて浴びせかける。
るぅとが泣きそうな顔をして、俺に向かって怒鳴る。温厚で、中立の立場を守ってきたるぅとはそこに居ない。
そう言えば俺は、こいつが感情をむき出しにした姿を初めて見た。
急速に頭が冷えて、軽率に言葉を放ったことを悔やむ。取り消したい、とできもしないことを考える。
言葉というものは時に、拳銃よりも強い武器となることを知っていたというのに。
そこに割り込んできたのはあなた…だったか、なんだったか忘れたが、とにかくそいつだった。全員の視線がそいつに向く。
俺が?どう見ても泣いているのはるぅとの方だ。
反発を含んだ俺の視線を無視してそいつは続ける。
そっかあ、もうそんな経つのか。なんて言ったあと、俺に向き直って、半分叫ぶように言う。
誰かが息を飲む音が聞こえた。鼻と喉の奥がつんとして、慌てて唾を飲み込む。
視界が滲んだ。息が不自然に震えて、つい下を向く。抱きついてきた小さな影に涙を拭われて、はっきりした目に映ったのは黄色い双眸。
自分も大粒の涙を流しているというのに、こいつは。
随分と長い間を開けてから、ポツリと零された謝罪につられるように、考える前に口を開いた。
その瞬間、空気が弛緩した。視界が急速に広がる。
ジェルと莉犬がくっついて泣いていて、なーくんはほっとした顔をしながら2人を慰めている。隣で、ころんがるぅとを抱きしめた。
2人がじゃれ合う横で、涙を収めたジェルが父さんに近づく。
再び問いかけられ、少し考え込む。8人分の視線が俺に集中する。たっぷり間を開けたあと、俺は言葉を発した。
SIDE ↝ あなた
それじゃあ10時半にはここを出るから、みんな早く着替えてきなね。そう言われてわたしはリビングを出る。
面倒事に突っ込んでいくのは変わらない、とみゆちゃんに苦笑されて、顔が熱くなった。
思い返してめちゃくちゃ恥ずかしくなっている自分と、よくやった!って褒める自分が喧嘩しそうである。
クローゼットを一瞥して呟く。
TPOを守るのが下手なわたしは、スポッチャ行くのにミニスカ履くバカ、と一部の人間に称されている。
検索欄に頼ったところで出てくるのはおしゃれなファッション誌の誌面。モデルさんたちが着こなしている服に近いものなどひとつも無い。
絶望に陥っているわたしの目に入ったのは淡いグレーのワンピースで、もうどうにでもなれ、これを着たらかわいく見えるだろう、そんな気持ちで腕を通す。
なんで買ったんだこれ、と思いながら時計を見る。
10時12分。服を選び直すと絶対に時間が足りなくなるのでこれで決定として、メイクポーチを持って全身鏡の前に座り込む。ドレッサーなど、ない。
4分の3くらいまで工程を終えたところでチークがないことに気づいて焦る。このままでは血色感のないゾンビになってしまう。もうめちゃくちゃだ。
助けを求めようと声を張り上げたのに、帰ってきたのは無意味なアドバイス。一旦チークを諦めて、寝癖に取り掛かることにした。
アレンジする時間はないから、肩までの髪を真っ直ぐに整えるだけにとどめてチークを探しにかかる。ゾンビにはなりたくないけれど時間が迫っていて絶体絶命。
探していたフラワーノーズの03番はペンポーチの中にあって、頭を抱えそうになる。なんでこんな所に入れたんだ、わたし!
とにかくもう時間がない。焦って適当に掴んだ鞄に荷物を詰めて、ゾンビのわたしは急いで部屋を出た。
だだっ広い玄関にはさとみが立っていて、呆れたような目でわたしを見る。靴を履くとドアを開けて待っていてくれた。どうしたの、昨日と別人じゃん。
血色のないゾンビ顔でにやけてしまった。さぞかし怖いことだろう。でも制御が出来ないから、ノーカンにしてほしい。
こくりと頷かれる。ガチガチのテーピングを施してきたこいつのせいで足先が冷えまくったことは言わずに、平気だよとだけ伝える。
デカい黒塗りの車からひょっこりと顔を出したみゆちゃんにいじられてむっとする。
ドアが自動で開けられる。タクシーみたいだな、と思いつつふかふかの座席に沈み込む。なんで9人も乗れるんだ、この車。
いつの間にか車は動いていたようだ。景色が流れていくのに、全然揺れない。なんだ、この車…
よく見ると運転しているのは陸斗さんじゃなくて、知らない人だった。運転手さん?次元が違う。
丸っこい蓋をパチンと開けて、くるくる、指でなぞってピンクの粉がたっぷり付いたのを確認して頬にのせる。
軽口を叩き合いながら、やっとメイクを完成させる。キメ顔をするとみゆちゃんが笑った。
しばらく車に揺られて着いた先は、県内で1番大きなショッピングモール。来たことがなかったわたしとみゆちゃんは感嘆の声を上げる。大きい、綺麗、やばい。
エントランスの奥に配置されたツリーに駆け寄っていく2人を見守る。
後ろを振り向くと、携帯をいじりながら興味なさげに歩く水色頭…ころん?がいた。ため息の主はこいつだったようだ。心做しか暗いオーラを纏っている。
ななもりが話しかけるも、口調は強く嫌悪を含んでいる。背筋にすっと冷気が流れ込んだような、冷たい言葉。ツリーに向かった2人は写真を撮られて笑っているというのに、この温度差が少し悲しかった。
こんばんは〜、お久しぶりです❕
受験期突入しました、更新頻度が下がってゆきますっ
ちょっとずつちょっとずつ書いてみたのですが流れが不自然だったらごめんなさいඉ́ ̫ ඉ̀
お気に入り29!!
レモンさん、遥斗さん、イルカさん、イタチさん、名無しさん、つばささん、柚希さんありがとうございます(⸝⸝ɞ̴̶̷ ·̫ ‹⸝⸝ᐡ)~☆
お名前出し不快でしたらお伝えください❕
目指せ...お気に入り35!目標は高く持つぞ…!!
気づけばもう12月になっている…お忙しい中読んでくださって本当にありがとうございます( ᐡᴗ ̫ ᴗᐡ)💭
良ければいいね、コメントお待ちしてます🌟











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。