今日は学校がお休み。
制服を着なくていい日は、少しだけ時間に余裕ができて、朝からちょっと丁寧にお料理をしてみた。
いつも通り朝ごはんを地下室に持って行って、私はリビングでみんなと食事をする。
「...美味かった。」
食器を取りに行った時にそう言って貰えるのが何より嬉しかった。
あっという間に時刻は12時、三門市内にお昼のBGMが流れる。
今日のお昼はもう既に決めていた。
親子丼にしよう。
ふんわり卵に、甘辛く煮込んだ鶏肉と玉ねぎ。
仕上げに三つ葉をのせて、蓋をして、湯気が立ち上る。
(今日は、一緒に食べられたらいいな……)
そう思いながら、私はお盆を両手に持って、地下へと向かった。
⸻
「ヒュースさん、こんにちは。お昼、持ってきたよ」
いつもは夕方にしか来ない私が、昼間に来たことに――
ヒュースさんは少しだけ、目を丸くした。
『 (...この時間はまだ....) 』
ふと目の奥から揺れるように伝わってくるちょっとした驚き。
(……あ、そうだよね。いつもはあなたお昼は居ないから....)
でもすぐに、いつもの無表情に戻って、静かにうなずいた。
私はお盆をテーブルに置いて、親子丼を差し出した。
「今日のお昼は親子丼。……ヒュースさんの分、ちゃんと味見して作ったよ!」
ヒュースさんは静かに器を受け取ると、無言で食べ始めた。
その姿を見て、私の胸がじんわりあたたかくなる。
(前は、食べるところなんて見せてくれなかったのに……)
最近、彼は「感謝する」と言ってくれるようになった。
それがすごく嬉しくて――
私は、そっと声をかけてみた。
「……ねえ、ヒュースさん。もしよかったら……今日のごはん、ここで一緒に食べてもいい?」
一瞬、彼の手が止まる。
でも、顔は上げずに、ただひとこと――
「……好きにしろ」
その言葉を聞いた瞬間、胸がぱぁっと熱くなって、
顔が自然と明るくなった。
「い、急いであなたの分も持ってくるね!」
笑いながら立ち上がって、私は駆け足で部屋を出た。
階段を軽やかに駆け上がる足音が、石造りの壁に響く。
⸻
扉が閉まり、静寂が戻った部屋。
箸を持ったまま、ヒュースは少しだけ眉を寄せた。
(……何を、そんなに)
胸の奥に、ふと生まれた“ざわつき”に――
自分でも、戸惑いを覚えながら。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。