「あ、あれ、でもやっぱり傍からみたらブラコンみたいですかね?」
たじたじしながら答えた私だったが、
北先輩は珍しく激しい動きをした。
ぶんぶんと首を振って、『NO』と全力で伝えてくれるように微笑んでくれたのだ。
北「あなたちゃんがそこまで考えてくれとるん、なんか嬉しいわ。2人を信じてみようっちゅー考え方、ええと思うで。」
「ふふ、そんなに言われると照れちゃいます。」
可愛らしく口に手を当てて笑ったあと、
ブレスレットとキーホルダーを大事にかかげて
会計に行こうとした。
その時。
侑「ちょ、サム!ええ加減泣き止まんか!マジであなた来るって、はよ!」
治「なんや人が感傷に浸っとる時に邪魔しやがって!ええやろここならバレへん!」
侑「バレるから言っとんねん!あ.........」
「えっ、」
北「どしたんあなたちゃ.........」
侑・治「「あ。」」
一瞬、時が止まったようだった。
2人も北先輩も私も動きを止めて、
その瞬間がスローモーションのようで。
音のないこま送りの映像を見ているように
体が動かなかった。
『頭が真っ白になる』
とはこの事を指すのだろうか。
ぐるぐると思考を動かすことさえできない私の隣で
北先輩が「侑、治。」と言葉を漏らした。
2人は声のした私の隣にゆっくりと視線を向けるが
先輩の顔を見た瞬間、目が点になっている。
北「奇遇やな。2人とも来とるなんて。」
この海のような水族館にぴったりの
優しい笑顔を貼り付けながら先輩は微笑んだ。
流石だ。驚きはしたものの微動だにしない。
「.........そう、ですね。2人とも来てるなんて、
びっくりです。」
ずるいのは承知しているが先輩の発言に乗っかるように
私は俯きがちにぽつり、と呟いた。
段々と現実に引き戻されていく頭では
波のような混乱が収まって疑問が浮かんでいた。
どうしてここに?
奇遇にも程がある。
2人で来るなんて珍しすぎる。
いや、その前に捉えなければならない問題があった。
「そ、その、金太郎は」
侑「きっ、きき、きたさ、きた、北様.....」
治「ごぶ、ご無沙汰しております.........」
北「おん。ご無沙汰.....はしとらんのちゃう?
あと北様っちゅー呼び方やめて貰えへんかな笑」
あちゃー、やらかしてしまったな。
大木菜金太郎くんは実は北先輩。
その事について嘘を塗ったままだった。
だってほら、文字通りの縮こまりようだし、
絶対びっくりしてるよね、
2人にちろ、と視線を向ける。
これから拷問でも受けるかのように
すっかり怖気付いてしまった2人は
苦虫を噛み潰したような表情をしている。
対面で話すのは少し緊張するけど、
仕方がない。
自分で蒔いた種は自分でどうにかするのが常識。
はぁ。とため息をついた。
ため息をつくと幸せが逃げる、
なんて言葉が存在するが
それだったらきっと、私はもう一生分の幸せを逃がしてる。
「すみません。北先輩。少し3人で話させてください。」
申し訳なさそうに眉を垂らして
私は北先輩の方を向いた。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。