第23話

思わぬ恋の落とし穴
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2020/10/06 11:00
ヤツメと、文華はお互いの事を思うい、古い本や文献を読み解き始める。

ヤツメは、文華の命を守る為に、いずれ一緒に暮らす事を夢見て、必死になり古い書物を、一つ一つていねいに紐解く

文華は、自分の寿命を受け入れ、ヤツメを傷つける事無く、別れる方法がない物かと、古い書物を読み進める。

 愛の力とは、残酷な物で、お互いに相手の事を思うあまりに、時として、すれ違いを生み出す。


ミコトは自分の愚かな行いをくやみ、自分の気持ちを押し殺し、ヤツメと共に、文華の瞳の中の、悪しきもののけの力を抑える為に、全力で古い書物を紐解く
 
 しかし残念事に、直ぐには、ヒントをつかむ事は、出来ず、朝を迎える。

 「あ~無い」「コレにも書いて無い、ダメか」「たしか今日から、健一君が、ここで働く事になってな」

 「はい、ヤツメ様」「ヒントとなる書物が、見つからなかった事は残念ですが、今日は一旦お休みになって、夕方に備えたら?」

 
「あ~眠い、とりあえず一回寝るか」


 その日の夕暮れ時に、ヤツメが目を覚ますと、健一が、可愛い洋服が入った紙袋を持って約束通り、少し浮かれ顔で、ヤツメの家を訪れる。

 
 「あの~ヤツメさん、昨日は文華ちゃんに出会えました?」


 「嗚呼、健一君、心配してくれてありがと」「大丈夫だったよ」

 「ん?」「それより、その洋服は?」

 この時、健一の瞳は、輝いていたが、少し恥ずかしいのか、モジモジしながら話しはじめる。

 「えっとね」「僕、昨日文華ちゃんと、二人で手を繋いで歩いてでしょ」

 「その時、小さい時に、お姉ちゃんと一緒に手を繋いで、歩いていた時の事を、思い出したんだ」

 「昨日あの後、家に帰って、思い切って、姉にカミングアウトしてみたの」

 ヤツメは、急展開に驚き顔を見る。
ヤツメの家には、お客様と、自分の仕事場に境をつける為に、木製のカウンターをこしらえているのだが、ヤツメはそのカウンターから身を乗り出し、健一の顔を見つめる。
 「健一君凄いじゃないか」「で、お姉さんは、何て言ってた」

 カウンター越しにいた健一は、思わず仰け反り、驚きの声をあげる。
 「近い」「ヤツメさん凄く近いですよ」

 ヤツメは我に帰り、自分専用の丸い椅子に腰掛け、両手を合わせ、健一につきだす。
 「あっごめん」「あまりに急展開に、驚いて」「すまなかった」「で、どうなった?」

 健一は、更に満面の笑みを浮かべ、嬉しいそうに、昨晩の出来事を話して始める。

 「それが、なんとお姉ちゃんは、ニッコリ笑ってくれて」「僕の肩をポンと叩いてね」「前々から気づいていたよ、で、何?」「何か困った事でもあった?」


 「健一君のお姉さん、男前だな」「それで、洋服の相談して、譲ってもらったのか」「良かったら、着て見てくれないか?」

 健一は、家に上がり、居間で服を着替え始める。

 真実をさらけ出す為には、理解者の協力が不可欠、逆に言えば、否定すると者が現れると
 さらに、かたさを増す。

 「ヤツメ様、健一君の恋のつぼみ、思ったより早めに、花が咲きそうですね」


 「嗚呼、身内に理解者がいて、本当に良かった」「一歩間違えたら、二度と取り返しが、付かないところだった」

 「この仕事、慎重にやらないと」

 「落とし穴に、落ちる」


 健一が、着替え終わったその時、あろう事か、歴史研究部の副部長が、ヤツメの家を訪れる。

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