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第1話

灰 谷 兄 弟
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2021/09/11 12:00 更新
コンコン

もう夜の12時をとっくに回っている真夜中

俺は自室のドアをノックする音に、ゆっくりと顔を上げた。

竜 胆
あなた?
あなた
こんな時間にごめんね
あなた
入っても…いい?
ドアの外にいたのは、パジャマ姿のあなた

俺は少し暗い表情のあなたに気づき、何も言わずに自室に入るよう促した。

生憎座れる場所がなく、仕方なくベッドに腰掛けるように言う。
あなた
ありがと
竜 胆
……
小さく笑みを浮かべるあなた。
竜 胆
どうした?
隣に腰を下ろし、出来るだけ優しい声色で聞く。
すると、あなたの唇がきゅっと噛み締められる。
あなた
先週の金曜日、蘭が夜出かけに行ったでしょ?
竜 胆
うん
あなた
夜…遅く帰ってきて…女の人の香水の匂いがしてた
竜 胆
……!!
そう言うと肩を小さく振るわせながら、さらに俯いてしまうあなた。

膝の上で握られた手には、ぽつりぽつりと水滴が跳ねる。
竜 胆
それを兄貴に言ったの?
俺がなるべく顔を見ないように尋ねれば、視界の端で弱々しく首を振るあなた。
あなた
怖くて聞けない…
竜 胆
怖い?
あなた
嫌だけど…本当はすごく嫌だけど…
あなた
それを言って、蘭に重いとか…めんどくさいとか思われたら嫌だから…言えなかった。
竜 胆
……
確かに、あなたと付き合う前の兄貴は酷かった。

毎日のように遊び歩き、女のことは性欲処理としか考えない。
ただ、それはあくまで以前の話だ。
あなた
蘭は私のこと大事にしてくれるし…大好きだけど…でも
そこまで言うと言葉に詰まってしまったあなた。

チラリと膝を見れば、さっきよりも手が濡れてる。

俺はゆっくりと視線をあげ、あなたの顔を見る。
あなた
でももうやだ…辛い…ッ
竜 胆
あなた…
今にも消えそうな弱々しい声。

自分に助けをを求めるような瞳に、俺は思わず目の前の体を抱きしめた。

途端に体を震わせ、泣きじゃくるあなた。

肩あたりがじんわりと涙で湿っていくのを感じながら、俺はあなたの体を強く抱きしめる。

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