コンコン
もう夜の12時をとっくに回っている真夜中
俺は自室のドアをノックする音に、ゆっくりと顔を上げた。
ドアの外にいたのは、パジャマ姿のあなた
俺は少し暗い表情のあなたに気づき、何も言わずに自室に入るよう促した。
生憎座れる場所がなく、仕方なくベッドに腰掛けるように言う。
小さく笑みを浮かべるあなた。
隣に腰を下ろし、出来るだけ優しい声色で聞く。
すると、あなたの唇がきゅっと噛み締められる。
そう言うと肩を小さく振るわせながら、さらに俯いてしまうあなた。
膝の上で握られた手には、ぽつりぽつりと水滴が跳ねる。
俺がなるべく顔を見ないように尋ねれば、視界の端で弱々しく首を振るあなた。
確かに、あなたと付き合う前の兄貴は酷かった。
毎日のように遊び歩き、女のことは性欲処理としか考えない。
ただ、それはあくまで以前の話だ。
そこまで言うと言葉に詰まってしまったあなた。
チラリと膝を見れば、さっきよりも手が濡れてる。
俺はゆっくりと視線をあげ、あなたの顔を見る。
今にも消えそうな弱々しい声。
自分に助けをを求めるような瞳に、俺は思わず目の前の体を抱きしめた。
途端に体を震わせ、泣きじゃくるあなた。
肩あたりがじんわりと涙で湿っていくのを感じながら、俺はあなたの体を強く抱きしめる。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!