「新居の条件は?」
「米花町からなるべく遠く……犯罪率の少ない街で」
というか県外も広く取り扱っているんですね、と聞けばそうなんです!と食い気味に返事をされた。
「米花町って治安が悪いですから、お客様のように早く引っ越したい、という方が多いんです。うちの会社はそういう方々をターゲットに展開してますからね。」
米花町って商魂たくましい人が多いのかな……。でもそう話す彼女の目はどこか忙しない。事件絡みかもしれないけど私は何も言いません。事件は私が契約し終えて家に帰った後にして下さい。
「でしたら……愛知や大阪あたりは?米花町よりもまだマシだと思いますよ」
愛知。緋色の弾丸の舞台で超電導リニアが暴れるのでなし。
大阪。西の名探偵はいるし東の名探偵もよく訪れ、数々の事件が起こるのでなし。
後ろで「お先休憩入ります」という声が聞こえる。話している彼女、紗希さんははーい、と返していた。いいなぁアットホームな職場。私はトリップしても変わらずSEなので在宅勤務である。引越ししてもなんら問題はないっていう点ではとっても嬉しいけれど。家も特に変わってなくて良かった。家無しホームレスにならなくて本当に良かった。
「そんなに都市部じゃなくても……。田舎でゆっくり暮らしたいです」
「そうですか?では……」
「きゃあああああ!!」
つい先程声をかけていた女性が入っていったバックヤードから悲鳴が響き渡る。現行犯ってことはなさそうだし……殺人か。いやだなぁ、死神が訪れませんように。青いテロップがつきませんように。
「……はぁ。」
ため息が一つ出る。トリップしてから数時間で事件二つ目か。こんなにボリューミーなコース、頼んだ覚えないんだけどなぁ。
「……米花町からは逃れられそうにないですね」
「ええ、そうですね……。」
2人して苦笑いしながら一緒に事情聴取を受けた。
ちなみに犯人は話していた紗希さんだったし動機は「バイトのシフトを旅行予定日に入れられ泣く泣く旅行を諦めなければいけなくなった」らしい。
ふーん、米花町の人には治安を悪くしているのが自分達だって自覚がないんだ。ふーん。だめだ、この町から逃げなくては。
もう人は信じられません。誰か緑の球体を連れてきて下さい。付き合ってもない好きな人との子供まで考えているで有名なあのス○モ。ウォー○ーをさがせで有名なあの会社でもいいから。
頼むから、私の新居を誰か用意して下さい。
【二つ、新居選びの前に、不動産屋選びも忘れずに。】
【新居の条件:米花町から電車で二時間以上、近くに探偵がいないこと、帝丹小学校と縁遠いこと】











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!