12月24日。
昼間からイブの夜を待ちきれない空気が街全体に漂っている。
その雰囲気を楽しみながら、足早に通りを歩く。
本当はこのままポアロに行って零さんと会いたいところだが、彼はお仕事。
私も今日はバイトだ。
杯戸シティホテル。
正面入口から見上げると、冬の空に52階建てのガラスの塔がまっすぐ伸び、その隣にはさらに高い68階建ての棟が寄り添うように立っている。
2つのビルには2本の連絡橋がかけられて、建物の内部にいながら、行き来できるようになっている。
その高さに圧倒され眺めていると、トラックがロータリーに停まった。
荷台のドアが開き、白い息を吐きながら菜美が軽く手を振る。
トラックの周りにいる数人のバイトや社員さんたちに軽く挨拶して、指示された箱を運び出す。
箱の中にはバラやカサブランカ、真紅と深緑のリース、金のオーナメンがぎっしり敷き詰められていた。
ホテルの自動扉を通ると、目の前に高級感あふれるロビーが広がった。
吹き抜けになっていて、見上げるほど天井が高い。
巨大なシャンデリアはまるで雪が舞うように輝き、その一つ一つが雪の結晶のように煌めいていた。
床一面は淡い色の大理石で、壁には所々に金属の装飾が施されている。
空間は横にも奥にも広く、私たち数十人が入っても全く窮屈さを感じない。
ロビーの中央には、二階へと続く大きな階段がある。
左右に分かれて緩やかに伸びる造りで、手すりは重厚な木と金属でまとめられていた。
その横には天井まで届きそうな巨大なツリーが。
ガラス細工のようなオーナメントが、光を受けて静かに瞬いている。
ふたりで、きゃっきゃきゃっきゃと騒いでいると後ろから声でどつかれた。
ロビーの奥へ進むと、スタッフ専用の動線が始まる。
そこからエレベーターを乗り換えながら、50階のパーティー会場まで昇っていく。
会場の廊下には、別の業者たちもたくさん行き交いせわしなく動いていた。
白百合、バラ、リース。
冬の彩りをまとった花たちを、ひたすら運び指定場所に飾りつける。
会場は、壁の一面が天井近くまで続くガラス張りで、外の景色がそのまま切り取られている。
遠くには富士山の稜線が淡く浮かび、別の角度からは東都タワーとベルツリータワーが聳え立っている。
これは絶景だ。
中央から奥にかけて、白いクロスを掛けた丸テーブルがゆったりと配置されていた。
壁際には細長いテーブルが並び、グラスが整然と置かれている。
ここに料理が並ぶのだろう。
会場の壁中央には段差があり、おそらくここで挨拶などするらしい。
私は幾つも並ぶ丸テーブルの上に花瓶を並べ、様々なスタッフとすれ違う。
すれ違いざまに菜美が肩を叩いてきた。
広い会場内で作業を続けて1時間半後、内装も整えられてきて、ようやく終わりが見えてきた。
「いやぁ〜、ありがとね、綺麗なオーナメント」
「いえいえいいのよ、うちに注文してくれてこっちこそ感謝」
菜美のバイト先の店長とホテルのオーナーの会話が耳に入ってくる。
ちょうど横を通り過ぎた私と菜美は、
「ちょっとお嬢さんたち」
とオーナーに呼び止められた。
そんなノリで、私たちは急遽ホテルの簡易スタッフに。
白シャツに黒ベストを羽織り、ホテル内を走り回ることとなった。
傾いた日の光が会場の奥まで照らしている。
時計を見ると15:30過ぎ。
パーティーが始まるまであと1時間程。
配膳準備の指示を受け、スタッフ通路を歩いていた私は、前から来る別のスタッフに何故か意識が向いた。
黒髪に整った顔立ちの男性。
足が長くて、特別背が高いわけではないのにスタイルがいい。
うわ、イケメン。
さぞかしモテるんでしょうねぇ〜。
互いに仕事中だし面識もないため何もないまますれ違った。
ーーただ、
今の人になにか引っかかったような…気がした。
そして17時過ぎ、着飾った招待客が次々現れ、空気が一気に華やいできた。
男性は濃い色のスーツに身を包み、女性は光を受けるドレスをまとっている。
場の空気に心浮かされながら、廊下の隅で感動を分かち合っていた私たちは店長に呼ばれる。
早足でスタッフ用エレベーターに乗り、途中で乗り換えながら、50階のパーティー会場から地下駐車場まで下がる。
地下駐車場は薄暗くて静かだった。
しかも寒い。
天井の蛍光灯が白く点滅し、車の影がいくつも伸びている。
誰もいない空間に、若干背中がぞわりとする。
花屋のワゴン車を奥に見つけて足を速めた時、視界の端に黒い塊が滑り込んだ。
後ろ姿だけで分かる、曲線が艶を放つ黒いシルエット。
テールランプの端と、黒いバンパー。
リアフェンダーだけで本物だとわかる威圧感がある。
さすが、著名人が招待されるパーティーだけある。
他に停まっている車も高級車ばかりだった。
感動しながらも足早にトラックへ向かった。
——車内。
黒革のシートにもたれ、銀色の長髪の男は、煙草を指に挟んだまま、無線に低い声を落としていた。
会話の相手は、杯戸シティホテルのラウンジの奥、死角になったソファに腰掛ける全身黒の大男。
無線を切り、鋭く光る眼光が、長い前髪から現れた。
バックミラー越しに、ダンボール箱を抱えながら走っていくホテルスタッフが見える。
不気味に笑うその口から、煙が吐かれた。
長くてすみません😅
たぶん絶対10話に収まらない。
13日に放送した赤レンガ倉庫の回見ました?
最後の安室さん怖かった😭
漫画読んでないので、えー!!!安室さぁぁん!!そんなことまでするのー!!??って半泣きで妹と騒ぎました笑











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。