第109話

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2026/06/17 15:00 更新
ヨルは膝を抱えたまま、じっと床を見つめていた。

涙は出そうになる。

でも――

泣きたくない。

負けたくない。

そんな気持ちも同じくらい強かった。

「……悔しい」

ぽつりと漏れる。

Fukaseは静かに聞いていた。

ヨルは拳を握る。

「フォーエイトも解散するし」

フォーエイトの名前を口にすると胸が痛む。

「引っ越しもあるし」

「音楽もしたいし」

「夢だってあるし」

声が少し震える。

「なのに体だけついてこない」

その瞬間、涙が一粒落ちた。

ヨルは慌てて拭く。

でも次から次へと出てくる。

「泣きたくないのに」

「悔しい」

「まだ頑張りたいのに」

心の中では二つの気持ちがぶつかり合っていた。

休みたい自分。

前へ進みたい自分。

どちらも本音だった。

Fukaseはしばらく何も言わなかった。

そして静かに口を開く。

「ヨル」

ヨルは顔を上げない。

「強いな」

その言葉にヨルは首を振る。

「強くないよ」

「泣いてるじゃん」

Fukaseは少し笑う。

「泣くことと弱いことは別だろ」

部屋が静かになる。

「本当に諦めた人はさ」

Fukaseは続ける。

「悔しいって言わない」

ヨルの肩が小さく震える。

「まだやりたいことがあるから悔しいんだろ」

「まだ夢があるから苦しいんだろ」

その言葉が胸に刺さる。

ヨルは涙を拭きながら頷いた。

「……うん」

「歌いたい」

「音楽したい」

「みんなと前に進みたい」

今度ははっきり言えた。

Fukaseは頷く。

「じゃあ今日は休む」

「それも夢のため」

ヨルは少しだけ笑った。

「それ、ずるい言い方」

「大森元貴にも言われそう」

Fukaseも笑う。

「たぶんな」

涙はまだ止まらない。

でもさっきとは違った。

悲しさだけじゃない。

その奥には、

それでも進みたい。

そんな強い気持ちが確かに残っていた。

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