あなたがいた
先に帰ったはずのあなたが、ドアの前に
そう言うあなたの声は震えとって、目には涙を浮かべとった
そりゃそうや
中学からずっと一緒におって、ふたりは誰よりも仲が良かったんやもん
他の女子からやったらあなたも傷つかんかったと思う
けど一番の理解者やった咲良やから
まだ部屋の中に咲良がおる
今ふたりを合わせたらあなたが更に辛くなるかなと思って僕が取りに行くことにした
中に入った瞬間、咲良が一瞬僕を見たけどすぐそっぽを向いた
やけど、一応何故戻ってきたかを伝えといた
今の僕にはどうしても咲良に対して冷たく接することしかできひんかった
咲良が泣いとったとしても、あなたと同じ対応ができひん
ありがた迷惑かもしらんけど咲良も改心してくれるかなと思って伝えてみた
ほんまに今日の僕ついてない気がする
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!