第41話

過去の話
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2024/04/21 20:03 更新
その数日後、鷹羽家から帰って来たぷりっつは大した収穫が無かったそうで肩を落としていた。
ぷりっつ
闇御津羽についての文書自体が少なく、書いてあるのはどれも同じような事ばかりだった。龍の水神である事と、賀茂川の辺りにある渓谷に棲んでいた事。昔は雨乞いの際に人身御供をしていたとかだ。
あなた
それが、私の方で少し収穫がありました。その人身御供として捧げられた内の一人が、恐らく私の母です。
ぷりっつ
なんだと?食わずに帰したという事か。
あなた
はい。そして闇御津羽は零落する前、静かな水辺を探すと言っていたそうです。
ぷりっつ
なるほど。賀茂川は山に囲まれているから人は少ないが、あの辺りは水辺が多すぎる。行って探すしか無いかもしれないな。
あなた
そうですね。では三日後の定休日に探しに行きましょうか。
二人は三日後に向けて、色々と準備を進めた。
あなた
忘れ物は無いですか?
ぷりっつ
ああ。行こう。
当日、二人は朝早くから身支度を整えて診療堂を出た。
あなた
少し冷えますね。
ぷりっつ
もう神無月だからな。
二人の間に沈黙が流れる。


あなたがちらりとぷりっつの顔を見ると、ちょうど目が合ってしまった。

慌てて逸らそうとすると、ぷりっつがにこりと微笑む。
あなた
!?
ぷりっつ
どうした?
あなた
いいいいえ!なんでも!
いつも仏頂面だった癖に、急に表情筋が柔らかくなりすぎではないだろうか。

その笑顔一つで一体どれだけの女性が恋に落ちるか、考えて欲しいものだ。
ぷりっつ
そう言えば、あなたは母親の記憶はあるのか?
あなた
幼い頃に病気で亡くなってしまったので、本当に少しだけしか覚えていないですね。どうしてですか?
ぷりっつ
そうか。人身御供にされても生きて帰った人が、どんな人か気になったんだ。
あなた
優しい人でしたよ。いつも人形を持ち歩いていて、私が泣いたら人形であやしてくれていました。
ぷりっつ
人形…もしかして、他に仲間を連れて旅をしていなかったか?
あなた
していました!すごい、何故分かったのですか?
ぷりっつ
人身御供と人形に縁のあるものと言えば、傀儡女くぐつめだろうと思ってな。流浪して人形劇をする芸能集団だ。
あなた
傀儡女は人身御供にされてしまうのですか?
ぷりっつ
遊女のような者達が殆どだが、干ばつだったり病が流行っている地に足を運び、傀儡女の内一番若く生娘である者を捧げ物として神を喜ばせる為に人形劇を行う者達もいたんだ。
あなた
一番若いのに捧げ物にされてしまうなんて、辛くないのでしょうか…
ぷりっつ
辛くとも受け入れるしか無いのだろう。先人達へ敬意を払う意味もあるのかもな。
あなた
そう言えば私、母が亡くなってしまった後、一緒に旅をしていた方々に見捨てられてしまったと思っていたのです。
あなた
もしあのまま旅をしていたら、私は傀儡女以外の道を選ぶ事は無かったでしょうし、次の人身御供は私だったと思います。あの方達は私を逃がして下さったのですね。
ぷりっつ
きっとそうだろうな。傀儡女が子を寺に置き去るというのはよくある話だ。あなたも寺に?
あなた
ええ。少し、苦い思い出ですが。
ぷりっつ
話したくなければ話さなくてもいい。
あなた
いえ、悪い事ばかりではありませんでした。むしろ運が良い方だったと思います。
あなたは、寺にいた頃の事を思い出しながらぷりっつに話し始めた。
私がお寺に来たのは三歳くらいの時だったそうです。

お寺にいた頃は毎日働き詰めで、まだ幼かった私はよく失敗をしてしまい、いつも怒られていました。

拾って貰った身という事もあり、失敗をしてしまった日や、誰かの機嫌を損ねてしまった時なんかは食事が与えられなかったりもしました。
ただ、私は病死してしまった母の影響を受け、誰かの命を救う仕事がしたいと思っていたのです。

いつかお寺を出られ時の為に少ない空き時間を利用し、薬草の勉強などをしていました。

時は流れ、私が十歳くらいの時でしょうか。

僧侶さんが体調を崩され、お寺に薬師さんが来ました。
こっそり覗いていると、薬師さんは私に声を掛けてくださりました。
薬師
興味があるかい?
こくこくと頷くと、薬師さんは静かに見ているんだよと、寝ている僧侶さんの横で薬を調合する様子を見せてくれました。

その時私は初めて本物の調合台に触れ、薬草の匂いを嗅ぎました。

凄く嬉しくて魅入っていたのですが、僧侶さんが起きてしまい、私を追い出すように仰いました。
その時僧侶さんが私に言った言葉に、薬師さんが腹を立てられ、少しの間お二人は言い合っておりました。
当時の私は怖くてすぐその場を離れてしまったのですが、薬師さんは帰る時、私に声を掛けてくれました。
薬師
私の施薬院に来る気は無いかい?贅沢は出来ないが、沢山の薬草と安心して眠れる寝床があるよ。
そうして私はその方に引き取られ、お寺を出る事が出来ました。

お寺側としても、引き取って貰って有難かったのだと思います。
あなた
その薬師さんが、鳳妙唐に来る前お世話になっていた施薬院の院長先生であり、私のお師匠です。
ぷりっつ
何故施薬院を出たんだ?
あなた
施薬院が経営難になってしまい、院長先生に頼まれて施薬院を出ました。今でもふと心配になる事があります。
ぷりっつ
一段落付いたらそっちにも顔を出しに行けるといいな。
あなた
ええ。久しぶりにお会いしたいです。

そんな風に話をしていると、目的の山の麓に到着した。
ぷりっつ
着いたな。萬堂から強い妖気に反応する護符を貰ってきたから、上手くいけばすぐ見つかるかもしれない。
続く

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