木葉先輩のプレーを見てからまるで上の空だった。
心臓の音こそなりやんだものの、気持ちは収まらない。なんならさっきより興奮してる。
…なにこれ
もしかして、私木葉先輩に落ちた?うそ。そんなことある?
だって木葉先輩はただ赤葦の先輩ってだけで、それだけで…
後ろから柔らかい声で呼ばれ、体がこわばる。
やばい、どうしよ。振り返らないと、でも、私、どんな顔してたっけ?いっつも木葉先輩にどういう顔で話してたっけ、あれ、
やばい───
パチッ、と目が合う。
……あれ。あれ?
なんか、違う。
さっきまで暖かかった頬が冷えていくのがわかる。
熱が放出されると同時に、心も冷えていった。
目の前にいる木葉先輩は私を不思議そうに見る。さっきまで顔が赤くて戸惑っていた後輩が、突然普通の顔に戻ったら驚くだろう。
私は、木葉先輩のプレーに惚れたんだ。
惚れた、というか、惹かれた?私のやる気をグッと引き出してくれた。
…ただ、木葉先輩…木葉秋紀、という男子高校生には惚れていない。
あくまでも木葉先輩のバレーに。…なるほど、面倒だな。うん。
木葉先輩とお話をしていると、後ろから赤葦に頭を叩かれた。痛いな〜と叩かれたところを撫でる。
赤葦や先輩方、監督達にお邪魔しましたと告げ、体育館を後にする。
その証拠に、木葉先輩の顔を思い浮かべてもなんとも思わない。バレーをする木葉先輩を思い浮かべるとドキドキするけど、なんだろう…うーん
なんて呟きながら、下駄箱まで歩いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。