孤爪サイド
愉快な音を鳴らす手元のゲーム機。
夕日が差し込むバスはゆっくりと揺れていた。
部活がオフの日。日直だった為少しだけ教室に残って、タイミング良くバスが来てたからバスで下校。クロは夜久くん達と遊びに行くらしくて先に帰ってしまった。
奥歯であくびを噛み、ゲームのクリア画面を見つめる。
…なんか、飽きた。やめよ。
そう思ってゲーム機の電源を落としてエナメルにしまう。ふと窓の外を見つめると、梟谷が見えてきた。
(プシューッ)
何人かが下車し、ふわっと外の空気が車内に流れてきた。俺は虚ろに窓の外を見つめる。
すると、見慣れた人物が二人いた。
なんて、他愛もない会話をしながらバスに乗りこんでくる二人。空いた席を見つけた二人は、俺の二つ前の席に座る。
いや、確実にそうだ。
でもなんで二人で居るの?二人って確か中学が同じだったよね、てことは一緒に帰ろ〜みたいなノリで?いやでも、梟谷の生徒ほとんど居ないし、下校時刻より結構遅いはず。それに赤葦はジャージで青葉さんは制服。待ち合わせをしたってこと。
でも、だから、どうして二人は一緒に…
…もし、もし二人の関係がそうだとしたら
赤葦にとっての俺とクロ、結構邪魔じゃない…?
口に手を当てそう思っていると、微かに赤葦と青葉さんの会話が聞こえてきた。
…え?何の話?
マネージャー…あぁ、
もしかして青葉さん、体験入部でもしたのかな。それとも見学だけしたとか?それでマネージャーに勧誘されて…え、それなら
2人は付き合ってない?
いや、でも、本当は付き合ってて隠しててってこともあるし…これが本当に付き合ってないって証拠にはならないし、けど…
騒がしい頭に、凛とした声が聞こえてハッとする。
……ん??
つまりそれって、
…だよね。
…なにそれ?
と、心の中で思ってしまった。けれど聞こえてくる赤葦の声はそこまで戸惑ってそうでなくて。青葉さんのことを理解しているのか、あまり不思議に思ってる感じはしなかった。
…でも、とりあえず
青葉さんは赤葦と付き合ってなくて、木葉さんのことも好きじゃなくて…
別に俺には関係ないのに
関係、無いのに…
…やだ
何で、わかんないけど、聞きたくない。
やめて
それ以上話さないで
気づけば体が動いていて、
2人の声も鮮明に聞こえる距離にいて、
(トントン)
彼女の肩を叩いていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。