『知らない。忘れたよ。そんなこと。』
そんなこと、と言われたのを覚えている。
宥めの声から耳を塞ぎ、ただ目の前にある怒りに全てを委ねた。
亀裂が轟音を立てながら入っていく様を、他人事のように見ていた自分と、同じような冷めた目をした元友達と共に、ぼんやりと眺めていた。
どうでもよくなった。
昔のあの子はも戻ってこないと、そう気付いた。
__嗚呼、そう。なら私も忘れるよ。全部。
そう吐き捨て、校門を出た足は、何時になく鉛のようで。
余計に腹が立った事だけは、覚えている。
でも、何を『そんなこと』と軽々しく形容されたのかは、覚えていない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。