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第1話

あの夏に、思い出を捨てた。
122
2020/11/10 11:00
『知らない。忘れたよ。そんなこと。』







そんなこと、と言われたのを覚えている。


宥めの声から耳を塞ぎ、ただ目の前にある怒りに全てを委ねた。
亀裂が轟音を立てながら入っていく様を、他人事のように見ていた自分と、同じような冷めた目をした元友達と共に、ぼんやりと眺めていた。



どうでもよくなった。


昔のあの子はも戻ってこないと、そう気付いた。





__嗚呼、そう。なら私も忘れるよ。全部。





そう吐き捨て、校門を出た足は、何時になく鉛のようで。








余計に腹が立った事だけは、覚えている。

















でも、何を『そんなこと』と軽々しく形容されたのかは、覚えていない。

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