僕は、「VOISING」という大型事務所の社長の息子だ。
この業界の事務所はボイシングの他もう二つ強豪事務所があり、ピリピリした空気がかれこれ数百年間は続いているようだ。
……息子と言っても、元養子縁組から社長に引き取ってもらった、血のつながりのない父親だ。
この界隈はいわゆる「人助けボランティア」を肥大化させたもの。大人曰く、僕が生まれる数十年前、とある科学グループの実験の失敗により伝説と言われていた「ヴァンパイア」「河童」など数々の「妖怪」をこの世界に繁栄させてしまった事から、この業界が設立されたらしい。
他二つの大型事務所はほぼ「人間」が社員対象とされている中、ボイシングは「人間」と「妖怪」どちらも対象とされている。
社長直々所属している「いれいす」も過半数が妖怪である。
僕はそんな生活に慣れ、共に過ごして行くと次第にそれが「憧れ」となった。
父親みたいに、人間妖怪の壁を無くして仲良くして行く世の中にしていきたい。僕が、そんな社会への呼びかけを全世界へと伝えていきたい。
……4歳児にして、叶わない夢が出来てしまった。
________叶わない夢だと知っていながらも、父親の真似をして修行や学業、スポーツとありとあらゆる手段を使い、二年が経った。
最初は父親から「後を継ぐのには早すぎる」と言われていたが、次第に僕の夢を真剣に向き合ってくれるようになった。
………そして今日、やっと僕が率いるボランティアユニットの設立の会議を僕と父二人で話す事になった。
父親は忙しい中、僕に時間を割いてくれた。この感謝を心に噛み締め、短い時間の間で僕が理解しなければいけない。
______________父は僕の気持ちを尊重し、あれから数ヶ月間に渡る僕のグループのお話が続いた。
そこで決まった事は、ユニットの名前は「Starlight Polaris」になったこと。
求人募集の書類選考は全てこえくんが目を通し採用不採用を決める事。
面接は受験者の家に訪問する事。
人間、妖怪全て求人対象にする事。
細かい日程を調整し、1月1日の新年。
ついに、ボイシングに新しいグループが生まれる事と、グループの社員募集を発表日から始める事を世に伝えられた。
……書類選考を始める日は2月1日かららしい。どんな人が加入してくるのか、すごく楽しみで仕方がない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。