『……』
気付けば知らない場所に居た。視界を遮られ目には見えねぇが気配でわかる……それにここは空気が薄い。手には錠、足にも鎖が繋がってんな…拉致られたか。銃…は、流石に取られてんな、ホルスターの感覚がない
『……何処だよここ』
と言うか俺を拉致ったのはどこのどいつだ。どんな拷問されても情報は吐かねぇぞ
キィ
木の軋む音がする。それと同時に部屋に微かに吹き込む風…ドアが空いた。ドアは木製…蹴破って出られるか…いやまぁその前に足に繋がれたヤツどうにかしねぇとならねぇんだけど
「起きた?」
『……』
あれこれ考えていれば声を掛けられる。この声…あの時とは声色が違うが俺を撃った警官か
『よぉ、お巡りさん。さっきぶりだな』
幸いにも口枷はされていない。声をかけられたので軽く挨拶をしてやるが、目の前の気配が微かにピリついたのを感じる
『なに怒ってんだよ、人の事撃った挙句こんなとこに繋ぎやがって…怒りてぇのはこっちなんだがな』
「……いや、まぁいいよ。別に怒ってないし」
『…そうかよ』
嘘だというのは直ぐに分かる。けれどそれを指摘して相手を刺激してしまうリスクを犯す必要はない。ピリついていた気配は徐々に平静を取り戻し、服が擦れる音がした
「…話し方から直さないと駄目か」
『……あ?』
刹那、視界を塞いでいた布がガッと勢いよく引き剥がされる。右眼に差し込む淡い光……それと共に映るのは、意識を手放す前に見た警察官の姿
「…僕の事、声だけで分かって欲しかったんだけど」
『声だけでわかったからお巡りさんっつったんだろ』
「……」
『…で、だ。お巡りさん、コレ外してくんない?』
この青年に俺を殺す気は無い。目を見れば直ぐに分かる…だけどなんだ、この目。俺を見ているようで…俺ではない誰かを見ている
「外したら、キミは何処に行く」
『此処を出る』
「駄目だね、外さない」
『……先に言っとくが、どんな拷問されようと家族の情報は売らねぇぞ』
バビルの情報を聞き出す為に、俺を此処に拉致った…仮説を立てて言うが目の前の警官は口元を歪め俺に繋がれた鎖に触れる
「大丈夫、拷問はしないよ。する訳ないでしょ、そんな事……ただ僕を思い出すまで此処に居てもらう。思い出すまで教え込む、嘘をついて話を合わせようとしても無駄だよ…僕には全部分かるから」
『……』
「…それを踏まえてもう一度……僕の事を覚えてる?あなた」
狂気に満ちた…けれど純粋な瞳。無理矢理取り繕った、今にも崩れそうな笑顔。之はまずいと頭が警鐘を鳴らす、今すぐ逃げろと脳が命じる
「…じゃあ、はじめましてだね」
何も答えない俺を見て、警官は煙草に火をつける。けれど警官は煙草を吸わず…黙り込む俺に煙草を咥えさせた
「僕はイフリート・ジン・エイト。これから暫く宜しくね」















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。