ナヨンside
あなたの下の名前の家へ向かうタクシーの中でしっかりと自覚した。
わたしは、あなたの下の名前のことが好きなんだ...
こんなにも誰かのために衝動で何かをするのは初めてだった。
タクシーの運転手さんを急かしたことも初めて。
あなたの下の名前のためならなんだってできる、そんな気がしてしまう。
繋がる電話に声をかける。
震える声で返事をしたあなたの下の名前。
到着し、あなたの下の名前が言っていた部屋の前でインターホンを押す。
ガチャ
わたしの顔を見るなり、安心したのか泣き崩れるあなたの下の名前。
聞きたいことは山程あるけど、今は何よりもまず安心させてあげたい。
乱れた髪。
はだけた服の首元につけられたいくつかの赤い斑点。
玄関に脱ぎ捨てられた男物の靴。
全ては分からないけど、きっとそういうことだろうと察した。
そっと手を握ると、びくっと体を震わせるあなたの下の名前。
そっと伝えるとこくりと頷いてわたしの手を握り返し、立ち上がる。
わたしは着ていた上着を脱ぎ、あなたの下の名前に羽織らせた。
腰に手を回し支えるようにして家を出る。
上着を貸し、あなたの下の名前に密着するようにして歩くわたしに気を遣ってそう言ったみたい。
さらにぎゅっと自分の方へ華奢な体を引き寄せると、
この純粋で綺麗な心を持ったあなたの下の名前は、今どんな状況で生きていて、どんな苦しみの中にいるのだろう。
まだ17歳。
誰かに守られて生きていいはずの年齢なのに、孤独の中で震えている。誰にも言えずに。
わたしの家に着く。
苦しそうにそう話すあなたの下の名前を、抱きしめずにはいられなかった。
強く抱き寄せて伝える。
あなたの下の名前がお風呂に入ってる間に枕をもう一つ出した。
ベッドは普段から大きいのを使っているから2人でも余裕がある。
それから、ココアを淹れた。
好きな人が家にいる。
あなたの下の名前はきっとつらくて苦しい中にいるけど、わたしはあなたの下の名前が自分を頼ってくれてここに居てくれるだけで幸せな気持ちになる。
だから次はあなたの下の名前を幸せにしたい。
わたしに幸せな気持ちをくれるあなたの下の名前。
あなたの下の名前にもその気持ちを知ってほしいってそう思うから。
あなたの下の名前がお風呂からあがってきた。
ドライヤーを取ってきて、あなたの下の名前の髪を乾かそうとすると、
震えた声でそう言っているあなたの下の名前。
一度ドライヤーを置いてあなたの下の名前の正面に移動する。
ぽろぽろと涙を流しながら体を震わせているあなたの下の名前。
片手をそっと握る。
時が止まったように感じた。
結婚、?
わたし、あなたの下の名前が好きなのに、
支えたいのに、その気持ちは持ったらいけないもの?
既婚者に恋愛感情なんてだめ、よね。
ドライヤーをしていたはずなのにこちらに振り返って、わたしの頬に触れるあなたの下の名前。
自然と涙が流れていたことに気付くのには時間がかかった。
真っ直ぐな目で見つめられる。
わたしのせいでまた目に涙を浮かべるあなたの下の名前。
ごめん、迷惑なオンニで、
本当にごめん。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。