悠side.
彼氏と喧嘩した。
大喧嘩なんていつもの事なのに。
手をあげられることも普段と変わりないのに。
恐怖から家を飛び出してしまった。
謝らないと悪化するばかりなのに。
最近おかしいと思っていたけど、やっぱり俺の彼氏は
手を挙げてくるタイプの人で。
思い出すだけで身体中が恐怖に怯える。
寒い訳でもないのに震えて。
家の前にしゃがみ込んで、彼の連絡先を押す。
今から押しかけてもいいかな。
今更連絡することも嫌になって、
インターホンを押した。
家の中には仄かに明かりが灯っていて。
静かに音を立ててドアが開かれる。
アロハの姿を見て安心してしまったのか、目頭が熱くなる。
思わず抱きついて、顔を隠すように彼の胸に埋めた。
震える体を抑え込むように強く抱きしめられる。
ズキズキと痛む頬を優しく撫でてくれる。
ゆっくり頷けば、俺の求める言葉をかけてくれて。
家の中に入れてくれて。
かすかに暖かい部屋のソファに腰を下ろせば、
体にまとわりついていた物が解けていく感じがして。
スマホが鳴り続けているので、電源を切った。
彼氏は嫌だ。
今日はアロハがいい。
本当はここにいてはいけないのだけど、
戻るのはとてもできなくて。
そういって腕を広げてくれる。
吸い込まれるようにまた体を預けた。
本音が、強く溢れ出す。
背中を撫でてくれていた手が一瞬止まった。
狙われていることなんてずっと前から知ってる。
それでも帰りたくない。
彼氏と一緒にいて叩かれるくらいなら
アロハと一緒にいたい。
安心感もあって……
ぽろぽろと涙がこぼれ落ちていく。
俺は多分……彼氏より
アロハの服をぎゅっと掴んで。
溺れそうな程零れる涙をもう抑えることはできなくて。
ふと投げかけられた提案。
あんな彼氏よりアロハの方が何倍もいいに決まってる。
一緒にいて辛いくらいならアロハと浮気する。
彼の袖で涙を拭ってくれて。
安心からか、嬉しさからか、笑顔が湧き出てくる。
アロハの唇がそっと、俺の唇に触れた。
アロハside.
またハルが彼氏と喧嘩して。
今回も手をあげられて、頬を真っ赤にさせて
俺に助けを求めてきた。
俺を見て涙を流して。
とても見ていられなくて家にあげた。
ハルを抱きしめて。
そんなことを口にされた時。
俺の心臓はぎゅ、っと締め付けられて。
俺なら絶対そんな思いさせないのに。
泣かせないし、悲しませたりしない。
断られると分かっていた提案。
ハルの動きが一瞬止まって。
初めて俺を選んでくれて。
そっと唇を重ねても、嫌がったりはしなくて。
潤んだ瞳でそう見つめてきた。
初めてを奪うことができなかったその唇に
指を当てる。
もう二度と、奪わせないと
ひとり心の中で誓った。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!