それは、雨上がりの夕方だった。
屋上は濡れていて、ベンチに腰かけることはできなかったけど、ふたりは傘を持たずに立っていた。
潮の香りと、どこか草のにおいも混じったような空気。
あなた は、言葉を選びながらゆっくり切り出した。
晶哉は黙って頷いた。
ただ聞くという姿勢が、彼らしかった。
言葉にした瞬間、胸がひどく苦しくなった。
この“秘密”は、誰かに話すたびに、自分の現実を突きつけられるようだった。
晶哉は驚いた様子も見せず、ただまっすぐあなたの目を見た。
その一言に、涙が滲みそうになる。
晶哉の声は、静かでやさしかった。
あなたは、尋ねた。
海風がふたりの髪を揺らす。
しばらく沈黙が続いた。
あなた がぽつりと呟く。
晶哉は笑った。
とても温かい、そしてほんの少しだけ切ない笑顔だった。
ふたりの指先が、そっと触れ合った。
それは手を繋ぐにはまだ遠く、でも心が寄り添うには十分な温もりだった。
あなた は思った。
この人に出会えたことが、奇跡なんじゃないかって……













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!