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第1話

長編読み切り
1,791
2024/11/07 13:05 更新
私はこの、なにわホスピタルで研修医をしている。

各科を周り、色々と勉強を重ね、
自分が何科に行くのかを決めていくのだが…。



このなにわホスピタル、癖が強い。






最初の研修先。

歯科。担当、長尾謙杜。




長尾「はい、お口開けてくださーい」

患者が口を開く。見る目はとっても真剣。
腕もいいと評判だけど、来るのはなぜか、
お年寄りや男性、子供ばかり。



子供の患者がやって来る。

☆「いーーーやーーー!!!!」

長尾「ふはっ笑 元気に泣いてんなぁ」

母「ほら、頑張るよ」

長尾「どうしたん?歯痛い?」

☆「いや!!!!」

長尾「嫌かぁ。でも、歯痛いまんまやと、
ご飯食べられへんで?美味しいお菓子も
食べられへんしなぁ。困ったなぁ」

☆「……」

長尾「ほら、頑張ってお口開けて見せて?
先生より大きな口開けれる?
ほら、こうして、あーーーって」


マスクを少しズラして大きな口を開ける長尾先生。
真似をして、少し口を開く子供。

長尾「おーーー!偉い偉い!出来るやん!
ほんなら、先生も頑張ってはよ終わらせるな」

治療はめちゃくちゃ丁寧で早く、
歯科衛生士への指示も素早い。

長尾「終わったで〜よう頑張ったな。
あっちで、頑張ったシール貰ってってな」

そう言って、頭を撫でる。
子供を見る目も優しくキラキラ笑顔。

う……眩しい。




休憩中、歯科衛生士の子と一緒になり、話を聞いた。

○○「長尾先生って、何であんなに腕が良いのに
女性の患者さん来ないんですかね?」

××「ああ笑 あのイケメン先生に、思いっきり口開けた顔
見られるのが嫌だからみたいですよ。
初めて来た人も、恥ずかしすぎて次から担当の先生
変えてくれって言うくらい。先生は全然気にしないのに、
もったいないですよね」

○○「なるほど」

××「でも!長尾先生に騙されちゃダメですよ!
あの人マジで指示早すぎ!鬼!聞き取るの必死ですもん!
間違えた時にはもう、恐怖!その時笑顔でも、
次から担当外されることもあるみたいだから」

○○「え、エグ……」

長尾「お!○○さんお疲れ様〜!」

○○「お、お疲れ様です!」

長尾「どうー?歯科ってちょっと癖あるもんなー。
細かい作業多いし」

○○「そうですね…長尾先生の治療裁き、
なかなか凄かったです」

長尾「せやろ?子供は特にしっかり見て、
早く終わらせてあげんと可哀想やしな。
あんまり恐怖心与えてもあかんし、大事なとこやで」

○○「ですね。勉強になります」

長尾「あ、○○さんついでに歯のお掃除してくー?
特別に俺やったるで?」

○○「い、いえ!結構です!最近、歯医者
行ったばっかりですし!」

長尾「なぁんだ、残念。今度は俺んとこ来てや?
丁寧にピカピカにしたるで?」

○○「はは…笑 はい…」

長尾「んじゃ、またな〜」

○○「お疲れ様でしたー」

確かに、あんなキラキライケメン先生の前で、
あんな顔晒すなんて……無理だっっっ!!!!
世の女性が長尾先生を避ける気持ちが物凄く分かる!!!!
無理だ!!!!



次に行かされたのは内科。
担当、高橋恭平。



高橋「今日はどうされました?」

患者「最近咳が酷くて…」

高橋「他に症状は?痰が絡むとか息苦しいとかあります?」

患者「いえ、そこまでは無いですけど、
寝る時に1番苦しいです。止まらなくなって」

高橋「1度、胸の音聞いてみますね」

聴診器を当てて、音を聞く。

高橋「咳止めの薬出しておきますね。
少し治まってきたなーってなっても、
最後まで飲みきって下さい。
薬飲み切っても治らないようなら、また来てください」

患者「分かりました。ありがとうございました」

高橋「はーい、お大事にしてくださーい。
○○さん、このカルテ向こう出しといてー」

○○「あ、はい」

高橋「次の人のカルテ」

○○「この方ですね」

高橋「うわぁ〜マジかぁ〜もういやや~~~」

○○「え、な、何ですか?」

高橋「もうこいつ、頭おかしいねんもん、帰らして〜」

○○「いやいや、拒否とか無理ですから」

看護師が名前を呼ぶ。

高橋「……はい、Aさん、どうも。今日は?」

少し冷たく話す。

A「高橋せんせぇ〜♡
なんかぁ〜、ずっと胸がドキドキしててぇ♡」

高橋「それ、前も言うてましたよね。治りません?」

A「高橋先生のこと考えてると治らなくって〜」



な、なるほど……これはキツイぞ。



高橋「とりあえず胸の音聞きますねー」



服を上まで捲ろうとするAさん。



高橋「あ、全然そんな上げなくて大丈夫です」


目線を逸らす高橋先生。


高橋「もう胸の音も問題ないですね。
Aさん、ここは内科なので、心の問題は
メンタルケアの方でお話聞いてもらった方が
いいかもしれませんね。めっちゃイケメンの
心療内科医紹介しますんで、
そちらに行ってみて下さい」


え。高橋先生めちゃくちゃじゃん。
精神科に丸投げ?怖っ。


A「イケメンなんですか?!ドキドキ治りますかね?!」

高橋「お話、しっかり聞いてもらうと
いいかもしれないですね(ニッコリ)」


Aさんが帰っていく。


○○「た、高橋先生、良いんですか?そんな事して」

高橋「いやもう、あいつある意味限界やねんもん。
内科のやることちゃうし。あいつめっちゃ元気やし。
俺目的で来られても、他の患者さんに迷惑やし。
ええんよ」


確かにこの、高橋先生もイケメンすぎるけど…
あんな患者さんホントにいるんだ…


高橋「次の患者さん、この間のレントゲン撮ったやつ出して」

○○「あ、はい。これですよね……あ……」

高橋「これ、気付くの遅かったな」

○○「ですね。手術でいけますかね?」

高橋「うーん…患者の体力がどれだけ残ってるかと、
どこまで治療する気があるか、やな。
外科に腕の良い先生おるから、手術するなら
その先生に任せるかやな」

○○「へぇ、外科にも凄腕な先生がいらっしゃるんですね」

高橋「うん、結構有名なんやで。
あ、○○さん今日仕事終わり予定ある?」

○○「特にないですけど」

高橋「俺と一緒に夕飯でも行かへん?
その後、プライベートで、内科検診でも…」

○○「セクハラで訴えるのと、グーで殴られるの、
どっちがいいですか?」

高橋「はい、すんません、次の人呼んでください」



全く。患者も患者だけど、このチャラい高橋先生に
泣かされた人はどれくらいいるんだろ…。
ただのエロ内科医か?



しばらく経って、次は心療内科だった。
担当、道枝駿佑。


A「先生〜♡私のドキドキが治らないのって、
問題ないって高橋先生に言われたんですけど、
本当に大丈夫なんですかぁ?♡」

道枝「大丈夫ですよ。高橋先生は、様々な病気を
早期発見できる敏腕内科医ですから。
その先生が違うって言ってるんであれば、
内科の病気では無いのかもしれないですね」

A「でも確かに、道枝先生に会ったら、
もっとドキドキして苦しくなってきちゃいました♡」

ニコッと笑う道枝先生。

道枝「Aさん、それはただの恋の病ですね。
薬も何も要らないので、もう大丈夫ですよ」

A「えー?こんなに苦しいのにぃ?」

すると急に真顔になる道枝先生。

道枝「医療費の無駄です。
他の患者さんにも迷惑になるので、
こういった迷惑行為はやめて頂きたい」

A「えっ……あの……」

またニコッと笑う。

道枝「分かって頂けたらどうぞ、お引取り下さい」

怖ーーーっ。何この先生、サイコパス?!
精神科医、謎!!!!もっと、患者さんに寄り添って
話を聞いてあげるもんじゃないの?!

○○「あ、あの…道枝先生?良いんですか?
あんなにズバッと言っちゃって」

道枝「たまにおんねん、ああいう人。
でも、ああいう人こそ1回ガツンと言ってやらんと
分からんねん。けど、そんでも来るようなら
ある意味なんかしら抱えてるかもしらんから、
それなりに対応はするけどな。
それにしても高橋……
まためんどくさいの押付けやがって」

そう言って内線を取る。

道枝「あ、高橋?お前ああいうめんどくさいやつ、
いちいち俺に押し付けてくんなよ。
その前にそっちで言ってやったらええやん」

高橋「あー、もう来はったん?なかなかヤバいやろ?」

道枝「ヤバいやろ、ちゃうねん。マジで時間の無駄やし」

高橋「いやでも、ホンマは何か抱えとるかもしらんやん?
優しくしたったら?」

道枝「ふざけんな!またお前目当てで来る患者
押し付けてきたら拒否るからな!」

高橋「医者に拒否権無いんちゃう?」

道枝「つーかさ、俺指名にしてくんの、マジでやめて」

高橋「イケメンにはイケメンをって」

道枝「ふざけんな、アホ」

ガチャッと勢いよく切る。

道枝「ほんっまに、あいつアホやわ。
あんなんでよう医者になれたな」

おっしゃる通りです…。

道枝「○○さん、困り事ない?
何かあったら、いつでも相談きてええからね」

○○「ありがとうございます」

うわぁ…あざと可愛いイケメン先生過ぎて尊い……。

道枝「次の人のカルテは……あ、この人ね。呼んでいいよ」

B「失礼します」

道枝「どうですか?少しは体調良くなりましたか?」

B「悪阻はだいぶ落ち着いてきたんですけど…
でも、やっぱり、なかなか思うように動けなくて。
そしたら、赤ちゃんのことも、素直に喜べなくて…
自己嫌悪してしまうし」

道枝「思うようにいかないとイライラしちゃいますよね。
分かりますよ。
でも、自己嫌悪なんてしなくて大丈夫。
今はどうしてもホルモンバランスが
崩れる時期ですしね。

少しずつ、悪阻が落ち着いて、
赤ちゃんも大きく育っていって、
胎動が始まったら、実感も湧いてきて、
可愛いって思えるようになるかもしれない。
だから、今は目の前の体調のことと、
気持ちを素直に受け入れながら進んで行きましょう。
また産科の大橋先生とも連絡とりあいながら、
しっかりサポートしていくんで。
無理しすぎないように。
あ、産科で赤ちゃん見せてもらうのも
いいかもしれませんよ。産まれたばかりの
赤ちゃんは、パワーいっぱいですから」

B「ありがとうございます…」

道枝先生は、今のところ割とマトモなほうなのかな。
いやでも、さっきのサイコパス具合はちょっと怖かったな…。

そしてまた、後日。
産婦人科、担当大橋和也。

大橋「Bさん、悪阻どうですか?」

B「まだ少し…」

大橋「そうですか、今日点滴してく?少しはラクになるし」

B「お願いします」

大橋「んじゃ、赤ちゃん見てこっか」

B「はい…」

大橋「うん、心臓元気元気!頭の大きさ、順調!
太ももの骨の長さ…っと。問題無し!
ほら、モニター見てみて。
赤ちゃん、よう手足動かしてるやろ?
元気やし、今のところ赤ちゃんなーんも、問題ないよ」

B「ありがとうございます」

大橋「んじゃ、また向こうで少し話聞こか」

衣類を整え、診察室へ戻る。

大橋「道枝先生とも色々お話出来てる?」

B「はい」

大橋「良かった。不安感はまだあるかな」

B「そうですね…なんか、ちゃんと、
喜んであげられなくて…」

大橋「初めての出産ですもんね。
きっと色々不安の方が大きいかもしれませんよね。
でも、大丈夫ですよ。僕も、助産師も、
看護師も保育士も、道枝先生も、みーんなで
Bさんを支えていきますから、安心して産んで下さい。
もうすぐ悪阻も終わると思うんで、
そしたら、今の不安が嘘のように妊婦生活
楽しめる時期が来るかもしれませんしね。
そういう人がほとんどですから。
元気な赤ちゃん、産みましょうね!」

B「はい…!」

少し笑顔になって帰っていくBさん。
大橋先生も笑顔でハキハキしてて、
大橋先生の存在が元気をくれるような、そんな感じで温かい。

○○「やっぱり産婦人科っていいですね〜
命が産まれる場所って良いなぁ。
赤ちゃん可愛いし癒されるし」

大橋「現実はそんな甘くないで?」

○○「え?」

大橋「まぁ、そのうち分かるわ!
○○さん、今陣痛来てる人おるから、あとで立ち会いな」

○○「分かりました」

出産の立ち会いかぁ〜さすがにドキドキするなぁ。

次々と妊婦健診のお手伝いをしていく。

看護師「大橋先生〜**さん分娩室入られましたー」

大橋「はーい。○○さん、行くよ。覚悟してってな」

○○「覚悟…?」

大橋先生と一緒に分娩室へ入っていく。

大橋「さー、**さん頑張るよー。もうすぐやからねー」

大きな声で患者さんを励ます。
その間にチラッとカルテを見せてもらった。

『子宮内胎児死亡 38週1日 男児』

し、子宮内胎児死亡ってことは…**さんは…

ドキドキした。今まで、お腹の中で動いている赤ちゃんや、
産まれたあとの1ヶ月検診にくる赤ちゃんばかり見てたから、
幸せいっぱいな空間だと思ってた。
忘れてた、全てが順調に終わる訳じゃないこと。
大橋先生が言ってたのはこう言うことだったんだ…。

大橋「**さーん、もうすぐ赤ちゃん会えるよー?
次の波が来たら思いっきりいきんでええからな」

**「うっ……やだっ……」

助産師が手を握る。

助産師「つらいね、でも、このままずっとお腹には
居られない。頑張って産んであげよう。
抱いてあげよう。ね?」

次の波が来た時、**さんは頑張っていきんだ。
頭が見えると、ゆっくり呼吸を促す。
すると、スルッと赤ちゃんが出てきた。

泣き声のしない分娩室。
静かな時間だった。

大橋「15:05、死亡確認」

静かにそう言って、赤ちゃんは1度連れていかれ、
タオルに巻かれて**さんの元へ戻ってきた。
大橋先生が後の処置をしながら、話しかける。

大橋「**さん、可愛いなぁ。よう頑張ったで!
おめでとう!いっぱい抱いてあげてな。
ほんで、いっぱい泣いていいから、
あとで、少しだけでも、ママの笑顔、見せたってな」

そう言って、処置が終わると分娩室の外へ出ていった。
私は泣きながら、大橋先生の後ろをついていった。

大橋「出産はどっちも命懸けなんや。
それに、100%無事に産まれてくるとも限らん。
幸せな出産がほとんどやけど、
こういう悲しい出産があることも、
頭には入れとかんとな。
ほんまに、元気に産まれてくるって奇跡やねん」

そういう大橋先生の目にも光るものが見えた。

看護師「大橋先生、第2分娩室、Cさん入られました」

大橋「はいよー」

さっと切り替わる大橋先生。

大橋「さー、どやどや、Cさん、3回目なら慣れたもんやろ」

C「この痛みは慣れへんわ!怒」

大橋「はっはっは、その元気があったらすぐ産まれるわ!
さー、もうちょいやな。1回陣痛波来ても
我慢しとってや?」

C「きぃ~~~!!!!無理やって先生!もういきみたい!」

大橋「もうちょい我慢やで。
今のままいったら後が痛いからな」

C「うぁ~~~~きたーーー!!!!痛い痛い痛い」

大橋「ふぅーーーって息吐くよ。吐いて痛み逃すよ。
今ピークやからな。コレ過ぎたら次や」

○○「が、頑張ってください!!!!」

C「あんた誰やねん!!!!頑張っとるわ!」

○○「す、すいません!」

ひぇ~~~凄いぃぃぃ!!

大橋「はい、今落ち着いてきたやろ。
次の陣痛来たらいけるからな」

C「全然痛いねんけど!あーーーもう!そこのあんた!水!」

○○「あ、は、はい!お水!」

Cさんにお水を飲ませる。

大橋「はい、くるよ〜」

C「いったぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」

その叫びにビックリしてしまう。

助産師「Cさん、はー、はーって言ってねー、
はー、はー、よ」

現場皆が、はー、はー、と言って促すと、
赤ちゃんの元気な泣き声が響いた。

大橋「はいCさん、16:20おめでとう〜女のコやね」

C「ありがとうございます!!!!」

嬉しそうに泣きながら泣いている赤ちゃんを胸に抱くCさん。

さっきの出産とはまるで正反対で…また涙が出てきた。

大橋先生のそばにいても、何も出来ず、
泣くしかできなかった2つのお産。

大橋「○○さん、こういうのはさ、経験積んでくしかないし、
俺らも悲しくない訳やないねん。
でもな、患者さんの前で俺らが泣いてたら
不安しかないやん?せやからさ、せめて、
患者さんに寄り添って、出来るだけ笑顔でいて
支えてあげよう?どの現場もそうやと思うけどさ。
赤ちゃん、可愛いやろ!抱かせてもらっといで」

そう言って、外来に戻って行った大橋先生。
その後、抱かせてもらった赤ちゃんの重みは
何よりも重く感じた。

また数日が経ち、以前高橋先生から紹介されたDさん。
胃癌が発覚し、外科へ来ていた。

外科担当、西畑大吾。

D「あのー、先生、なんの病気なんですか?」

西畑「胃癌です」

わ、単刀直入に言うんだ。

D「ステージとかは…」

西畑「ステージIII、これくらいなら僕の手術で
何とかなります」

D「は、はぁ……あの、大丈夫なんでしょうか…」

西畑「どういう意味ですか?」

D「いや、手術とか初めてなので色々不安で…」

西畑「問題ないです。僕、失敗しないんで。」

おい、聞いたことあるぞ、そのセリフ。

西畑「それより、そんなに不安になるなら、
もっと早く受診するべきでしたね。
色々といつもと違った症状があったはずですが」

D「すみませんでした…病気かもしれないと思うと怖くて」

Dさんが帰っていく。

○○「西畑先生、あんなにズバッと言っちゃって
大丈夫なんですか?」

西畑「本人が聞きたいなら、しっかり伝えるのが
義務でしょう。本人の希望ですから。
自分の身体のことですし。
大丈夫ですよ、僕の腕ならほぼ、取り除ける」

○○「ほぼ?」

西畑「あとは開いてみないと。リンパ節に転移していたら、
話は別だ。高橋先生がどれくらいまで
見極めているのか、楽しみですね」

○○「はぁ……」

仲良いのか悪いのか?癖強っ……
いや、この病院の先生たちみんな癖強すぎるから、
どこ行っても大変そう。

後日、Dさんが入院してきた。

D「よろしくお願いします」

○○「あんまり、緊張しないで下さいね。
私達もサポートしていきますので」

D「ありがとうございます。今日、西畑先生は…」

○○「午後に回診に来られますよ」

D「そうですか。分かりました」

○○「何か、ご不安な点がありました?」

D「いや、大丈夫です」

午後、西畑先生が回診に来た。

西畑「Dさん、今は痛みとか何か
いつもと違う感じとかないですか?」

D「大丈夫です」

西畑「そうですか。明日の手術は予定通り行えると思います」

D「先生っ……あの、ホントに大丈夫なんですかね?」

西畑「まずは中を開けてみて、
分かる範囲の癌は取り除きます。
もしリンパ節等転移が見つかれば、
また高橋先生と相談しながら
今後の治療の仕方を考えていきますので」

D「転移……ですか」

西畑「今、現状CTやレントゲンで見てる範囲では
まだ転移は見つかってないので、
そこまで不安にならんでも大丈夫ですよ。
それに、僕を信じてくれれば。
外科に関しては僕はいつだって全力ですから」

落ち着いていて、少し冷めたような話し方をして、
メガネをクイッと上げる西畑先生。


まっっっっったく全力に見えないんですが。
全力なんだ……へぇ……そうですか……。




手術の日。

D「よろしくお願いします」

○○「Dさん、頑張りましょうね。
寝てる間に終わっちゃいますから!」

D「はい」

麻酔が入り、手術が始まる。

西畑「Dさん、胃癌手術始めます。今何時?」

○○「9時30分です」

西畑「2時間以内。分かった?」

全員「はい」

は?2時間?え、無理でしょ。CT見たよね?え?

西畑「メス。○○さん、遅い。鉗子……メイヨー……」

次々言葉が飛び交う。
サポートする看護師たちの捌きも早い。

西畑「○○さん、邪魔だからそっちで見てて」

ショック……いや、でもこれにはついていけないや…
早すぎる…


西畑先生の宣言通り、2時間かからずに終わった。


西畑「○○さん、僕の下に付きたかったら、
もっと早く捌いて下さいね。
あと、手術の後は焼肉って決めてるんで、
今夜空けといて下さい。焼肉行きますよ」

○○「は…はい……」

メガネをまたクイッと上げると、戻っていく西畑先生。

焼肉……はいいけど、何話せばいいんだろ。
謎すぎませんか?手術の後に焼肉もなかなかなメンタル。
さすが外科。

その後、休憩を挟むと、高校生の男の子に出会った。

高校生「お、若い先生!西畑先生にやられて来た?」

○○「あなたは?」

高校生「俺は西畑先生の手術受けて、今リハビリ中」

○○「そうなんですね。てことは…理学療法士の…」

高校生「そ。藤原先生んとこ行くねん」

○○「私も今から研修に行くところなんです」

高校生「やった!マジ?女の先生とかラッキー」

○○「何言ってるの。あなたから見たら全然オバサンでしょ?」

高校生「んなことないよ?先生若く見えるし可愛いやん」

○○「最近の高校生って、なかなかチャラいんだね」

高校生「さぁ?どうやろな?あ、藤原先生だ。あの人やで」

○○「お疲れ様です。研修に来ました、○○です」

藤原「おおー!聞いてる聞いてる!こっちやで!」

理学療法士、整形外科医どちらも担当する、藤原丈一郎。

藤原「おい、お前またナンパしてきたん?」

高校生「言い方!たまたま会ってん。
そしたら、ここ来るって言うてたから
一緒に来ただけやし」

藤原「今日も頑張るで」

その高校生は、車椅子に乗っていて、
リハビリテーションで、歩行の練習だった。

立ち上がるのも、少し時間がかかり、
ようやく立ち上がり、少しずつ歩こうとするが、
2~3歩進んだところで止まってしまう。

藤原「どうしたん?向こうまでキツいか?」

高校生「キツいっつーか……んで……」

藤原「ん?」

高校生「何でこんな、動かへんねん!!!!
こんな毎日毎日やってんのに!!!!」

藤原「焦んな焦んな。ここまで進めたやん」

高校生「進めた?!どこがや?!たった3歩やで?!」

藤原「お前はよう頑張ってるよ。そんな焦る事ないやろ」

高校生「早く…早くせな、大事なサッカーの試合あんねん!こんなんでほんまに走れるようにまでなるんか?!」

藤原「……どうかなぁ」

高校生「え……?」

藤原「無理して身体痛めつけても、自分が困るだけや。
今はしっかりひとつひとつ、
焦らずにクリアしていく方が大事なんちゃう?
1回の試合も大事かもせぇへん。気持ちも分かるよ。
けどな、俺はこの先もずっとお前が大好きな
サッカーやれるように一緒に
頑張っていきたいと思ってるよ?」

高校生「………分かったよ…。先生がそう言うなら…」

藤原「な、絶対歩けるようになるまで支えるから!」

30分ほどリハビリを頑張った彼は、また明日!と
笑顔で病室へ戻って行った。

○○「あの子、サッカーやってたんですか?」

藤原「そうやって。部活の帰りに事故に巻き込まれて、
左半身不随。ホンマは…歩けるようになっても、
サッカーやれるようになるかは、
正直難しいかもしらん。ま、でも、俺はあいつの
可能性を信じてやりたいからな!
手術したのも、あの西畑先生やし!」

○○「西畑先生って、そんなに凄いんですか?」

藤原「あの人、不可能も可能にしちゃうくらいの
腕してんねん。まさにゴッドハンド!!
けど、プライベートヤバいからな」

○○「え?」

藤原「あ、今日午前中一緒に手術してんやろ?
焼肉誘われた?」

○○「あ、はい」

藤原「いやー、今夜楽しみやなぁ」

○○「え?どういうことですか?」

藤原「まぁ、夜になれば分かるよ」

なんなんだ??
どういうこと?

謎すぎるまま、廊下を歩いていると、
小さな女の子が走ってきた。

○○「わっ!!」

E「あ、せんせー、ごめんなさい」

○○「廊下は走っちゃダメよ?どこから来たのかな?」

大西「Eちゃーん!!」

E「キャー!!りゅちぇがきたー!!」

笑って私の後ろに隠れる女の子。

○○「初めまして。研修医の○○です」

大西「初めまして。小児科医の大西です。
明日から来るって言ってた研修医が君?」

○○「あ、そうです。あの、この子は?」

大西「Eちゃん。脱走癖があって、目を離すと、
すぐ病院中逃げ回って追いかけっこされるのが
大好きな困ったちゃん。ねー?Eちゃん?
さ、今日はもう追いかけっこ終わりやで」

E「やだぁ!りゅちぇ、マズイお薬飲ませるもん!」

大西「Eちゃんが元気になるためには仕方ないの。
その代わり頑張ったら、ごほうびあげてるやろ?」

E「でも、チックンも嫌!」

大西「チックン頑張ったらマイメロちゃんのシール
あげよか?」

E「ほんまに?!」

大西「ほんまに!ほな、行こか」

○○「では、明日また、よろしくお願いします」

大西「あ、今夜、焼肉やろ?楽しみにしてるわ!」

○○「え?!」

大西先生まで知ってるってどういう事?

その日の夜、勤務が終わると同時に
西畑先生から声をかけられた。

西畑「○○さん、行きますよ」

断れない雰囲気に、仕方なくついて行く。

藤原「おー!大吾待ってたで!お疲れ!」

○○「え?!藤原先生?」

長尾「お腹空いたっす!早く食べよー!」

高橋「俺タンが良い〜!一生タンで良い!
あとガリ大盛りで!」

大西「一生タンてなんなん?」

道枝「大吾くん、早く食べよ。今日はお酒いけるんすか?」

西畑「1杯だけいっちゃおっかな♡」

大橋「んじゃ、乾杯しましょ乾杯!」

○○「えっ?!えっ?!なんですかこの繋がり…
それに、西畑先生のキャラ変ぶりが
もうちょっと意味わかんな過ぎて…」

西畑「俺ら皆先輩後輩で仲良し組なんよ。
ちなみに、俺はプライベートこんなやで♡」

いやいやいや……わんこみたいな可愛い顔されても……
ズルすぎるじゃん…

藤原「それでは、みんな揃ったんで、カンパーイ!」

全員「カンパーイ」

道枝「恭平、最近またファン増えてんの?」

高橋「まぁ、定期的に来るんよな、ああいうの」

長尾「ええなぁ。俺ん所、子供と年寄りしか
来ぉへんねんけど」

大橋「そらしゃーないわ。謙杜の前で、女の子
大口開けられんやろ笑」

藤原「和也も毎日なかなか大変ちゃうの?」

大橋「今日は、久々死産でなぁ。この会無かったら、
メンタルきつかったわ。大ちゃんありがとうな」

大西「死産かぁ。そらキツいな。
俺やったらマジで耐えられんわ」

西畑「偶然でも良かったわー。
りゅちぇ、子供大好きやもんな♡
今日の患者、恭平が早くに見つけてくれたから、
ほぼいけたわ」

高橋「でもあれ、病院かかるまでが遅かったんよ。
もうちょい来るの遅かったら
もっとステージ進んでたで?」

西畑「せやろなぁ。ま、なんとかなって良かった、ほんまに」

○○「なんか……先生たち病院とイメージ
違い過ぎるんですけど…あ、大橋先生以外」

大橋「なんでやねん!けど、まぁ、俺ら割と病院では
真面目にやっとるからな」

○○「ま、まじめ??」

藤原「え、真面目に見えへんかった?」

○○「いや、癖強すぎて…特に西畑先生は…」

全員「僕、失敗しないんで」

○○「それ。どっかで聞いたことありますし」

西畑「だってーそれ言いたい為に猛練習したし
猛勉強したんやもん♡結果、貢献してるやろ?」

○○「まぁ…笑」

西畑「○○ちゃんっ♡今日疲れたやろ?
はい、美味しいお肉食べて楽しんでな♡」

ちゃん?!?!
やっぱり謎すぎ~~~!あざとすぎー!!

研修医生活……このなにわホスピタルでやっていけるのか、
何だか不安な毎日な私です。

end.

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