《 sideあなた 》
なーにが「頑張ってね」だ。
失敗を願っているのに。
覚悟を決めたようにそう言ってふっと笑った隼くん。
本当に告白するんだ。
恐らくその告白は成功する。
視界に隼くんがいるのが辛くて、逃げるように数原さんと中務さんのテーブルに飲み物を運んだ。
ニコニコしながら受け取ってくれた2人。
私のささくれた心が丸く優しくなったような気がした。
きちんと会釈して、次は佐野さんと関口さんのテーブルへ。
こちらもニコニコしながら受け取ってくれる。
最初はちょっと無愛想な感じがしていた佐野さんも、取材を見ていると案外お喋りだということが分かった。
そう言ってテーブルを離れようとすると、不意に関口さんの大きな手が私の手首に触れた。
振り向くと、困ったように眉を下げている関口さんが目に入る。
パッと手を離した関口さんが一瞬何か言いかけて、すぐに謝る。
よく分からないけどいいかと思って今度こそ離れようとすると、今度は佐野さんに呼び止められた。
いまいち話の流れが掴めない。
私があまりにもバカみたいな顔をしていたのか、佐野さんは苦笑しながらくいっと指をさした。
その先にいるのは隼くん。
白濱さんを挟むようにして片寄さんがその反対側に座っている。
なにやら白濱さんのスマホを3人で覗き込んでいるらしく、くすくすと笑う声が聞こえた。
佐野さんの言葉を引き継ぐようにして微笑んだ関口さん。
真っ白な歯が素敵な笑顔だ。
諦めようとしていた私の心臓がドクンと跳ねる。
でも、その“来る”は、あの日と違う。
私目当てじゃない。
アイスコーヒーを一口飲んだ佐野さんがそう言って笑った。
うんうん、と関口さんも首を縦に振ってくれる。
諦めも肝心、なんて言葉がある。
心底その通りだと思った。
隼くんは、私なんかが憧れていいような人じゃない。
芸能人に恋した一般人が、最終的に幸せに結ばれたなんて聞いたことないし。
好きな人の幸せが私の幸せ。
そう、そのはず。
隼くんがどんな人と結ばれようとも、隼くんが幸せならそれでいいじゃないか。
佐野さんの目尻にくしゃっと皺が寄る。
どこか幼いその笑い方は、隼くんと似ているように思えた。
うんと美味しい珈琲を淹れよう。
隼くんとそのお相手が幸せになるようにと願いを込めて。
ようやく佐野さんと関口さんのテーブルから離れた私は、視界に移る隼くんの笑顔から目を逸すことはなかった。


















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。