縁壱 兄さんが 家を出て行ってから
数日が経ち 、
父上たちは 、変わった 。
元から 実力主義で 、
巌勝兄さんを 武士にするために
育てていたのは 知っているが 、
最近は 、
巌勝 兄さんに 修行を付けず 、
使用人たちと共に
縁壱兄さんを 探すようになった 。
そのため 、
最近は 巌勝兄さんが
ひとりで鍛錬しているところばかり見かける 。
巌勝 兄さんが 、
沢山の 努力をしていることなんて 、
1番 、父上が 分かっているはずだろう ?
縁壱 兄さんに 才能があるのは 知ってる 。
だって あの時 、
巌勝兄さんが倒せなかった 父上を
一瞬で 倒してしまったのだから 、
だからと言って 、
巌勝兄さんを 蔑ろにしていい
理由になんてならない 。
巌勝兄さんが 、辛くなってしまったのも 、
あの時 俺が見た " 化け物 "になってしまったのも 、
" 才能 " を 目の当たりに されたからだろう … 。
巌勝兄さんのために 、
俺に 何か出来ることは ないだろうか 、
勿論 、
俺は 巌勝兄さんの 味方でいるし 、
ずっと 努力 を認め続ける 。
けれど その相手は 俺でも いいのだろうか …
巌勝 兄さん が 認められたいのは
才能がある 兄上で 、
今までも 修行をつけていた 父上だろう 、
俺が 認めてあげたところで
巌勝兄さんは 救われるのだろうか …
俺は 、
縁壱兄さんが出ていくのを
ただ 、見ていることしか出来なくて 、
嫌な未来 を 止めたくて 、
色々頑張ろうとしたのに 、
今 止められているのかも分からないし 、
巌勝兄さんが 悲しんでいるのを
ただ見ていることしか出来なかった 。
俺に できることが あるのかも 分からない 。
それが どうしようもないほど 無力感を感じて 、
凄く 、辛い 。
クイ ッ
いつの間にか 、
巌勝兄さんは 俺の近くに来ていたのか 、
後ろから 腰に腕を回し 、
俺の体を 強く抱きしめた 。
" 変わったこと " といえば 、
父上達だけではない …
巌勝 兄さんも 、
色々な 意味で 変わった 。
なにが 目的かは分からないが 、
俺に 抱きついたり 、
頬やおでこに 接吻をしたり 、
愛を 囁く数が増えたり 、
今までよりも 距離が 近くなった 。
別に 、
それが 不快と言う 訳ではない 、
でも 、 心底 不思議だった 。
抱擁を するのも 、
接吻をするのも 、
" 愛してる " と 伝えるのも 、
" 恋人 "
に することだろう 。
巌勝兄さんの 寂しさを埋めるのは
俺でいいのだろうか … 。
巌勝 兄さんは 、
寂しそうな 悲しそうな 表情を浮かべ 、
俺に対して 、そんな質問をしてきた 。
どう答えるのが 正解なのだろうか 、
" 愛してる "
俺も その言葉を使うことは 、
幾度となくあった 。
でも 、
巌勝 兄さんが 今聞いている " 愛している " は
なにかが 違うような気がする 。
考えずに、
軽く言って良い 言葉では無い 。
けれど 、
寂しそうに 、 悲しそうに
そんなことを聞いてくる
巌勝 兄さんを目の前 にして 、
" No " なんて
口が裂けても 言えなかった 。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。