第141話

雪原の上で、
28
2026/01/28 23:13 更新
時間が、狂い始めたのは、家族がいるのが当たり前だと思えていたのは、何年前(いつ)だったっけ…?
リアナ・アレクサンドラ。
『アレクサンドラ』と言う私のファミリーネームが私の心を縛り続けた。

ロシアの軍人家系で生まれ育った私は、周りから軍人になると思われていた。
勿論目指していたから良かった。
けど、父さんに反対されて、フィギュアスケートを始めた10歳から周りの目と声が変わった。
『軍人家系から軍人以外が輩出されるのはおかしい』

『フィギュアスケートなんてくだらないスポーツなんかやめろ、』

『将来に何も役に立たないスケートなんぞ辞めて戦車に乗れ、』





心が、壊れかけた。限界だった。
生きることを、諦めかけた。
でも、無視して笑って、滑り続けた。
結果を出し続けた。
出し続けなければこの世界にいることは出来ないから、お父さんが願った『お前だけは生きていて欲しい』と言う思いを叶える為にも、滑り続けることしか私には出来ないから
でも、ジュニア2年目に入った13歳の夏。
私の連続金メダルはそこで途絶えた。
リアナ・アレクサンドラ
リアナ・アレクサンドラ
ユウカ・キサラギ…?
日本人選手で1つ下の女の子だった。
大きな差を突きつけられたのは初めてで2位を取った時は少し混乱した。
あんなにオドオドしていた子がこんなにも化けるなんて思わなかった。だって…
如月悠花
如月悠花
無理無理無理無理。
海外初大会…
絶対ミスる…無理無理無理無理無理無理
そんなことを言っていたのにノーミス。
しかもバチバチに踊る振り付けで回転不足も無く滑りきっていたから、凄いなって心の底から思った。
大会が終わって、もう一度ユウカの姿を見た時、ターコイズの瞳が心の底から綺麗だと思った。
この時は、こんなに仲良くなるなんて、想像してなかった。
でも…2年前。
兄さんがウクライナへの軍事侵攻での戦闘中に兄さんが殺されてから…
少しずつ、平穏が崩れ始めた。
リアナ・アレクサンドラ
リアナ・アレクサンドラ
えっ…?
エレナ・アレクサンドラ
エレナ・アレクサンドラ
父さんも死んだら私も戦場に行く。
ごめんね、リア
嫌だなんて言える権限、私には無い。
お願い、私を、1人に…しないでよ…
その数週間後、父さんも死んだ。
何もかもが、どうでもいいと思ってしまった。
姉さんも戦場に行って、家は私とお母さんだけになった。
ティアナ・アレクサンドラ
ティアナ・アレクサンドラ
リア、
リアナ・アレクサンドラ
リアナ・アレクサンドラ
母さん…
ティアナ・アレクサンドラ
ティアナ・アレクサンドラ
安全な国に居てくれない?
リアナ・アレクサンドラ
リアナ・アレクサンドラ
えっ…?
その言葉をきっかけに私は日本に来た。
そこからは平穏だった。
滑って、大会出て、心の底から楽しいと思えたのは随分父さん久し振りだった。
何より…
ジェームズ・レサーティ
ジェームズ・レサーティ
リア、
ジェームズ(初恋の人)がいたから、
ジェームズはウクライナの出身。
祖国の人間を殺している一族の娘である私を、恨んでいても仕方がないのに、それでも…私の傍に居てくれた。
感謝してもしきれない。
日本に来て、心の底から息がしやすかった。
私を非難する人はどこにも居ない。
心の底から、のびのびと滑れて凄く嬉しかった。
でも…
如月悠花
如月悠花
天音!!
文月天音
文月天音
あ、りが…とう…
最愛の親友であるアマネを亡くした。
4年間、ずっと一緒にいた親友だった。
大切な友達だった。
家族とジェームズとユウカ以外で初めて私を受け入れてくれた子だった。
遺してくれていた手紙の前で、私は泣いた。
幸せになって欲しかった。
ずっと一緒だと思ってた。
大好きで、ライバルで親友で…大切な友達だった。
その後、何故か父さんと兄さんが帰ってきて…
アマネの葬儀でまた泣いて、帰国して、母さんとも久し振りに会って…
ティアナ・アレクサンドラ
ティアナ・アレクサンドラ
リア!!
リアナ・アレクサンドラ
リアナ・アレクサンドラ
母さん!!
再会して、家族でご飯食べて、雑魚寝して…
オリンピック出て…銀メダル取って…
卒業して、ジェームズと結婚して…
子供も産まれて…
これ以上ない幸せをくれたよね。
ありがとう。そして、これからも…
貴方の傍からは離れられないよ。

アマネ、まだそっちに行くには時間がかかる。
でも、いつかそっちに言った時に全部話すから、
だからどうか気長に待ってて欲しい。
いつまでも沢山の花が咲いて、暖かいその場所で、

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