なんだかかもめんの様子がおかしかった。
笑っていたし、楽しく喋れていた。
だけど苦しそうだった。
顔色が悪かったし、腕もとても細かった。ご飯を食べているか心配になるほどに。
なにか声をかけるべきか、と悩んでいると気づいたら朝が近づいていた。
「よし!会おう!!」
『今から家いくよ〜!』とメッセージを送ってお風呂に入って準備をした。
返信も既読も付かないけど...まぁいっか☆
「いってきまーす」
「ワンッ」
サムチワが返事をしてくれた。夜になったら散歩に連れて行ってあげなきゃと思いつつ、
かもめんになんて声をかけようか考えていた。
ピンポーン
ピンポーン
ピンポーン
おかしい。
いつもはインターホンを鳴らせば寝ていても起きてくれるのに。
違和感を感じながらもドアノブに手をかけるとあることに気がついた。
「...開いてる」
かもめんはいつも家に入るときに鍵をかけるのに。
嫌な予感がした。
「かもめんっ!!」
部屋の中を探してみるとベッドで死んだように眠っていた。
顔色はあまり良くない。昨日会ったときより悪化している気がする。
勝手に部屋に入ってしまってはいるので勝手にでていくのも申し訳ない。
朝ご飯でも作って起きるのを待っていようかとキッチンに行き、冷蔵庫を開いた。
「...え?」
ゼリーと水と酒とモンエナしかない。
おかしいと思い、風呂場に行って見ると血と吐瀉物のついたシーツが洗濯機のなかに入っていた。
洗剤だけ入れて回せていなかった。
取り敢えず洗濯機を回しかもめんのもとへ戻る。
規則的な呼吸音が聞こえて安心した。
シーツについていた血は最近のものだったし、量がかなり多かった。
怪我をしているのなら心配だと思い身体を確認した。
左腕に、沢山切り傷ができていた。
血が固まって腕全体が赤黒くなっていた。
多分、自傷行為。
傷口に触ってしまったようで傷が開いてしまい、また血が流れた。
とても深く切られているものもある。
絆創膏じゃたりないとおもい、コンビニに駆け込みガーゼと包帯、食べ物を買った。
帰って来てからもかもめんは死んだように眠っていた。
誰かに腕を触られている気がして目が覚めた。
「ん...ぅ」
「かもめん!よかった!」
翔ちゃん?なんでここに?
いろいろな疑問が浮かんだが口に出せなかった。喉がいたい。
左腕に違和感を感じて見てみると包帯が巻かれていた。
「かもめん、その腕の傷なんで...」
気を使ってくれているのがひしひしと伝わってきて、嬉しいような申し訳ないような気持ちになった。
「ぁ...っケホ」
「水飲める?」
声をうまく出せないので頷いてから水をもらった。
身体に染み渡る感じがした。
ぐぅううう
お腹がなった。恥ずかしい。
「ご飯用意したんよ。一緒に食べよ?」
「う、ん」
リビングへむかおうと立ち上がったとたん視界が回転した。
「あっっぶなぁ」
倒れそうになったのを翔ちゃんが受け止めてくれた。
「せめて、よびどうさ、もしくは声を出してくれん?」
「ごめんね、ありがとう」
「どういたしまして!」
翔ちゃんの笑顔が眩しくみえた。イケメンってすごい。
「いただきます。」
「いただきま〜す。」
僕がコンビニで買ってきたうどんを食べるかもめん。
うまく啜れてなくてかわいい、なんかハムスター的な。
そう思ってカルビおにぎりを食べながら眺めていた。
「...翔ちゃん、ごめん、たべきれない...」
かもめんが申し訳無さそうに言った。
半分以上残っている。
やっぱり体調は良くないんだろう。
「謝らんくても大丈夫やよ、少し休もうか。」
「うん」
かもめんの部屋に戻って二人でベットに腰掛けた。
かもめんは魂が抜けたように力が抜けて、僕にもたれかかった。
身長こそ僕のほうが高かったけどかもめんのほうが筋肉質でがっしりしていたはずなのに。
かもめんの身体は細く、小さくなっていた。
まるで子どものような身体で寄りかかっているかもめんが、今にも壊れて砕けてしまいそうで。
その存在がまだ壊れていないことを確かめたくなって優しく抱きしめた。
その身体の体温は僕よりずっと低かった。
手を握ると弱い力で握り返してくれる。
その手はとても冷たかった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!