バチッ!
乾いた音が部屋に響いた。
バチッ!
バチッ!
母さんは、俺の頬をぶった。
ガチャリ、といって
玄関の扉が開いた。
廉斗、というのは、母さんの再婚相手だ。
今帰ってきたのもそいつ。
絵里というのは母さんの事だ。
俺の父親は───
隣の部屋から母さんと義父さん
声が聞こえてくる。まるで━━━━
まるで俺に聞こえさせてるように。
自分に言い聞かせるように言う。
深呼吸をして。
自分の部屋のクローゼットをあさると、
目につける包帯が出てきた。
なんだかんだ言って、住む場所とお金は
用意してくれる母さんだ。
………考えるのはやめよう。
今はこの状況を生き延びるのみ。
ガチャっと言って俺の部屋のドアが開いた。
…母さんだ。
起きていたことがバレた。
ゲームはしてないが、
俺は布団にもぐりこんで頭まで布団を被った。
『明日は学校に行きなさいよ』
邪魔だから行ってこいということだ。
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深夜。
また、ガチャリと部屋のドアが開いた。
義父さんだ
ほら。
ほら。
重なる。
あいつに。
義父さんは、母さんが俺を虐待している
のを知らない。母さんは父さんの前では
俺を大事にするから。
父さんは俺の部屋から出ていった。
だけど、おれの頭からあいつの
存在が頭にこびりついて離れない。
父さん。
俺の実の父さん。
もう、顔は覚えていないけど。
父さんは飲んだくれで、クソ野郎だった。
だけど母さんのことはとても大事にしていて、
母さんが俺のことを優先するのをとても嫌がって
いた。だから、いつも叩かれ蹴られ言葉の暴力で
心をへし折られる毎日だった。
昔は。
父さんは俺のこと、そして俺を庇う母さんが
嫌になったのか、この家から出ていったのだ。
母さんはその頃から俺を殴ったり蹴ったり、
父さんと同じように俺の心を粉々にした。
父さんのことがとても好きだったのだろう。
俺のせいで父さんが出ていった、と
毎日 言われ続け、俺は大抵の悪口には
耐えられるようになったほどだ。
“お前の存在価値なんかない“
父さんからよく言われた言葉。
この言葉だけが、俺の耐えられない言葉だ。
ましてや、これまで優しくしてくれていた、
母さんから言われたとしたら。
俺の心は、どれだけぐちゃぐちゃになるだろう。
だめだ…
俺の存在価値って、
何?