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第8話

もしもの世界 ②
1,960
2022/12/25 23:28
私たちはラトを探すため、まず図書室へ向かった

ガラガラっと扉を開けると……
ベリアン
そういえばフェネスくん、この前話していたあの小説はもう入荷されていますか?
フェネス
ああ、あれならついこの間入ってきましたよ
多分まだ誰も借りに来てないと…………あれ?
カウンターでベリアンと話していたフェネスがこちらに気づいた
フェネス
こんにちは。珍しいね、こんな大人数で
ベリアン
おや、あなたさんにフルーレくんも
皆さんも本を借りに来たのですか?
フルーレ
いや、違うんです。今俺たち、ラトを探してて……
フェネス
えっ、ラトを? それは……タイミングが悪かったね
そう言ったフェネスは困ったように笑った
ロノ
え? それってどういう……
ベリアン
ラトくんなら、つい先程出ていきましたよ
少しの間だけ本を読んで、すぐに飽きたみたいで……
バスティン
入れ違ったか……
あなた
でも入れ違ったってことは、まだ近くにいるんじゃないかな?
フルーレ
そうだろうね
すみません先輩方、ありがとうございました
フェネス
ううん、気にしないで
俺は図書委員の仕事があるから手伝えないけど……
その分、ここで応援してるよ
ベリアン
私も見つけたら報告しますね
人手は多い方が良いでしょうし
ロノ
すんません助かります!
それじゃ、失礼しました!
フェネス
うん、頑張って!
そしてあなたの一人称(自分の呼び方)たちは図書室をあとにした
あなた
ここは……
フルーレ
中庭だよ
たまにラトが昼寝してることがあるんだ
ロノ
バスティンもよくここで昼寝してるよな
バスティン
ああ、ここのベンチに座っているとついウトウトしてしまう
学園の真ん中にある緑豊かなスペース。花壇にはたくさんの花が咲いていた

日当たりがよく、確かに昼寝には向いていそうだ
あなた
わあ……! 綺麗な花……
アモン
その花はダリアっすね
あなた
うわっ! ア、アモン!?
花を眺めていると、横からスっと現れたのはアモンだった

アモンは「どもっす」と言うと、あなたの一人称(自分の呼び方)が見ていた花に目を向けた
アモン
この花、気に入りました?
あなた
えっと……うん、花びらの形が可愛いなって思って
淡いピンク色をしたその花は見事に咲いていた
あなた
きっと真心込めて育てられてるんだろうなぁ……
アモン
へへっ、気付いちゃいました?
そうなんすよね〜! 我が子のように大事に大事に育ててるんすよ
あなた
あっ、アモンが育ててるんだ
アモン
そうなんす、花の世話も美化委員会の仕事なんで
まぁ、オレ以外誰も真面目にやってくれないんすけど……
アモン
でも、放置して枯れるのも嫌なんで
花が好きなオレが1人で育ててるようなもんすね
そう言ったアモンはニカッと笑った

現実とそんなに変わんないな……と思ったが、その言葉はそっと胸の中に閉まった
アモン
ところで、こんな大所帯でどうしたんすか?
まさかみんなでオレに会いに来たってワケでもないでしょうし……
フルーレ
えっと、俺たち、ラトを探してるんです
中庭に来てたりしてませんか?
フルーレがそう問いかけると、アモンは苦笑いを浮かべた
アモン
あちゃ〜……残念だったっすね、ラトはもうここにはいないっすよ
バスティン
”もう”ということは、もしや……
アモン
はい、ついさっきフラフラとどっかに歩いて行ったっす
ロノ
げ、まーた入れ違いかよ……
フルーレ
まったく、どうしてこうも動き回ってるんだ……!
アモンの言葉にがっくりと項垂れるロノに、ため息をつくフルーレ
アモン
その様子だと、苦戦してるみたいっすね……
オレはまだやることあるんで手伝えないっすけど、もしもまたここに来たら声かけとくっす
バスティン
ああ、助かります
アモン
いーえ、気にしないでくださいっす
それじゃ、頑張ってください!
あなた
うん、ありがとう、アモン!
アモンに別れを告げて、あなたの一人称(自分の呼び方)たちは再びラトを探し始めた











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