あなた's past
そして、徹さ…及川さんと別れた。
それからというもの、私は影山と一緒に居ることが増え、少し仲が良くなったと思えば…
【及川さんと別れたのに…また違う男といるのね!男好き。】【及川さん振るなんていいご身分。】なんて言われるようになった。
…でも、もう卒業だ。
だから私は影山と話はしないものの、放課後の自主練だけは手伝っていた。
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『トス、あげて。速いやつ。』
影山「そろそろ足やばいんじゃねぇの?」
『…打ちたいの』
影山「1日5本って決めてたろ。今日10本近いぞ。」
『ボール打ってる時って、なんか…認められてるような気がするんだよね。』
影山「?」
『私にも出来るんだー!って、笑』
影山「…でも、ダメだ。」
『トスあげないと、腕落ちるじゃん。』
影山「ダメだ!!だって、及川さんから…」
『及川さん?』
影山「いや、なんでもねぇ。ダメなもんはダメだ。」
『ちぇー(拗)』
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何本か打ったり、ボールを上げたり。
それだけだった…のに、
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ある日、影山はまだ来ていなかったため、教室に戻ってみると…
影山「……」
影山は、静かに涙を流していた。
『影山…?』
影山「こっち来んな、」
『辛いことあった?吐き出していいから、』
影山「…じゃあこっち来い。」
そう言われ、近付いてみると…
ふわっと抱きしめられた。
誰かに見られるとやばい、と思って離れようとするも…
影山「…離れんな」
と言われ、抱きしめる手が少し強くなったので、諦めることにした。
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それからはまたいつもと変わらない日々…の、はずだった。
先程の一部始終を見ている人がいたようで…
"付き合っている"という噂が絶えなくなった。
言わずもがな、影山は顔がいい。モテる。
…だから、また私はいじめの標的となったのだ。
その中には、【及川さんはこんな最低な女と付き合ってたのね。】【及川さんはもっといい人が現れるはずだわ!】なんて言葉もあって。
…私の心はどんどん抉られていく。
付き合っている訳でもないのに、なぜこんなに言われなきゃならないのだ。
…もう、影山と距離をおこう、。
これからは、"中学が一緒なだけの人"と、認識しよう。そう心に決意した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。