第40話

最終章:オレと贖罪 Part3
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2025/11/11 08:57 更新
《ラジオデーモン》その強さは圧倒的だった。
強いとは思っていたけど……あのヴァレンティノをここまで一方的に……。
アラスター
あー…! コホンコホン! あなた、
何をぼうっとしているのですか?
唖然としていたオレに、アラスターが声をかけた。
アラスター
さあ! 感動の再会の時間ですよ!
言って腕を広げる。オレは迷わず駆け寄り、その腕の中に飛び込んだ。
あなた
アラスター! アル!
アラスター
あなた!
ああ……ずっとすれ違っていたり、誤解していたりで、久しぶりのアラスターの感触……。
夢じゃないんだ! オレ、この腕の中に戻ってこられたんだ!
アラスター
ああ……愛していますよ。
私のあなた……。
あなた
オレも……オレも愛してる! アル!
ああ! すっげえ嬉しい! 
こんな幸せなことがあるなんて信じられない!
ただの《契約》じゃなくて、アラスターと本当に心から愛し合えるなんて!
アラスター
あなた……夢のようです。
《契約》がなくなっても、あなたが
私を選んでくれるなんて……。
あなた
傍にいるよアル!
《契約》なんてもう関係ない!
あんたと一緒にいたいんだ!
オレたちはきつくきつく抱き合った。今までベッドの中で抱き合ってきたのとは全然違う。

アラスターの愛が、そのまま何よりも強く感じられる!
オレはこの《ラジオデーモン》を愛し、また、愛されている。

感動が強すぎて言葉にならなくて……オレも、アラスターも、それ以上の言葉はなく、
どちらともなく互いに唇を重ねた。





アラスター
アラスター
危ない! あなた!





バアン!!!!






あなた
……………え?






そして、オレは我に返った。
ここは、『天国』ではなく、『地獄』であることに。






アラスター
がふぁッ………。






咳き込んだアラスターの口から大量に血が溢れた。




ヴァレンティノ
殺す……殺す殺スコロス!!!



ヴァレンティノ
ぶち殺してやるぞ貴様らァァァーーーーーーーー!!!!


ヴァレンティノ、いつの間に!?

瓦礫から立ち上がった奴の手には銃があり、こちらに銃口を向けていた。

アラスターが撃たれたのか!? 
オレをかばって!??
あなた
ア…アラスター……!
ダメだ! ダメだ!!
オレはすぐに膝をつくアラスターに駆け寄った。

マイクステッキを支えになんとか倒れずに済んでいるアラスターは、血の気の引いた真っ青な顔だった。

抱き起そうとしてすぐにギョッとして手を引っ込めた。オレの両掌が真っ赤だ。もう、どこからアラスターの服で、どこから血の色なのかわからない……。
アラスター
ゴホゴホッ……!
さ、さすがに油断しました……。
アラスター
どうやら…当たり所が悪いようです。
あなた
そ、そんな………死ぬな!
死なないでくれ!!!
ヴァレンティノの銃と銃弾は天使の鋼でできている。いくらアラスターでも、こんなにひどい傷じゃ……。
アラスター
ああ、そんな顔をしないでください。
笑ってMy Dear。笑顔でなけりゃ
オシャレとは言えませんよ。
アラスターはこんな時にまで、笑顔でオレを元気づけようとする。
ヴァレンティノ
ハハハハハハハハハ!!!
終わりだな!
ヴァレンティノ
その傷では、いかにラジオデーモン
と言えど動けまい!
勝ち誇ってヴァレンティノが高笑う。
ヴァレンティノ
よくも! この俺に!
さんざん煮え湯を飲ませてくれたな!
殺す! 貴様の目の前で!
この駄犬をぶち殺してやるぞ!
あなた
……ふざけんなよ、ゴミ虫野郎。
オレはゆらりと立ち上がった。
ヴァレンティノ
なんだ? 命乞いか?
もっと大きな声で……、ッ!?

目があった瞬間、
ヴァレンティノがビクリを身をすくませた。
あなた
テメエ……
あなた
オレの愛するアラスターを
あなた
よくも傷つけたな………。

 グルルルル………!


オレは激怒していた。
これほど激しい憤怒にかられたことはない。
あなた
絶対に許さねえぞ!
ヴァレンティノ………。
ヴァレンティノ
フン! 威勢よく吠えるが、
ラジオデーモン抜きで、お前だけで
俺に敵うと思っているのか?
アラスター
あなた、無茶です。
相手は上級悪魔……。
あなた
アラスター……。
もう、満月も罪も寒さも呪いも……何も怖くない。
アラスターを失う恐怖に比べれば。

オレは死んで初めて、
ありのままのオレ自身を受け入れていた。
あなた
あいつはオレが倒す。
あなた
ゆっくり休んでいてくれ……。


 オレは両手を上げた。
 アラスターの血でべったりと塗れた手のひらを。



 そして―ーーーーーー、



 オレは、両手についたアラスターの血を。
 一滴残らず舐め取った。






オレは「愛する者の血肉を喰らう」という禁忌を自ら再び犯した。


 この罪をアラスターに捧げる。
 この力は愛する者を守るために使う。


オレは自分の中に封じていた《内なる悪魔》を解き放つ。
もう満月のように暴走させるのではなく、飼い慣らすのだ。

この……極上の《エサ》をもって。


《呪い》を力に変えて
腹を減らした怪物が覚醒する。



ああ……愛する者の血は、これほどに美味いのか………。




オレは罪人。飢えた狼。堕ちた邪悪な魂。


 

青き暴食の悪魔グラトニー・ブルー






 ジジジジジ………  ガガガガガガガッ…………


グラトニー・ブルー
グルルルルルルルルル!!!
オレの全身に、恐ろしいほどの魔力が溢れる。
ヴァレンティノ
な、なにィィィィィィィィ!!?
アラスター
こ、これは―ーーー!?
オレの体が変化していく。
長い髪は青から赤く……しかし、髪の先端は黒く。

狼耳は長く伸びて鹿耳となり、短く角が生える。
銀色の牙は黄色く染まり、長い尻尾は短く赤くなり、
青い瞳は禍々しいラジオ針の形に歪む。
グラトニー・ブルー
オオオオオオーーーーーーーン!!!
オレは高く咆哮を上げた。
アラスター
あなた!? その姿は!?
ヴァレンティノ
こ、これはまるで……、
《ラジオデーモン》!?!?
アラスターもヴァレンティノも、突然「変身」したオレに驚愕している。
今のオレは、狼の悪魔でありながら、アラスターの特徴を色濃く残した姿だ。
ヴァレンティノ
ま、まさか……奴の血を飲んで、
奴の力を得たというのか!?
アラスター
ひゃはッ!? それ、最高じゃないですか! 今、私の血があなたの一部に溶け込んでいるんですね!
ぐるるるるる……と小さく唸ってオレはラジオ針の目でヴァレンティノをにらんだ。

……実はこれ、摂取した血肉の量に変身時間が比例するんだよな……時間切れになる前にヴァレンティノを倒さねえと…。
グラトニー・ブルー
ガル!!!
オレは獣のように飛びかかり、ヴァレンティノに襲い掛かった。

前に戦った時は、ボロ負けしたほどにヴァレンティノは強敵だが、アラスターの血を得たオレは、メチャ強くなっている。
ヴァレンティノ
死ね!
ヴァレンティノが次々に二丁銃を撃ってくるが、オレの敏捷性には敵わない。オレは獣のように縦横無尽に屋内を駆け回り、壁や天井を飛び跳ねて全く狙いを定めさせない。
ヴァレンティノ
くそ! ちょこまかと……!
短気なヴァレンティノはすぐに隙を見せた。オレは飛びかかり、奴の顔面を殴りつける。
ヴァレンティノ
ぐおッ! よくも……!
伸ばしてきた腕を逆にとらえ、噛みつく!
ヴァレンティノ
ギャアアアアア!!!
グラトニー・ブルー
グルルルルルルル!!!!
オレはそのまま顎に力をこめ、関節と逆向きに顎を捻った! ポキンと簡単に、ヴァレンティノの腕を一本食いちぎってやった!
ヴァレンティノ
アアアアアアアアアアアア!!!!
ヴァレンティノの絶叫がこだまする。………が。
すぐさまオレは距離を取ると、口にくわえていた腕を吐き出した。
グラトニー・ブルー
ま……まずい……。
オエエエエエエ!!!
なんつーゲテモノだ!!!
……そうか。今の覚醒モードのオレは「愛する者の血肉」じゃないと喰えないんだ。
この《力》は、なんでもかんでも力を吸収できるチートではないらしい。
ヴァレンティノ
き、貴様ァ!!! 
ふざけやがって!!!
ヴァレンティノが大きく羽を広げ、空中へと飛び上がる。距離を取って遠距離で狙撃するつもりだ。
ヴァレンティノ
ハハハ! どうだ!
ここまでこれるものなら――――。
オレはすぐさま、自分の足元から黒い触手を召喚した。
ヴァレンティノ
な! なんだと!?
触手はすぐさま、空中にいるヴァレンティノに巻き付いて動きを封じる。
ヴァレンティノ
馬鹿な! 奴の能力まで――――。
驚愕するヴァレンティノ。オレは触手の上を駆け上がり、ヴァレンティノめがけて大きく爪をふるった。

オレの右手が、青い炎に包まれる。
グラトニー・ブルー
極寒を食らいやがれ!!!
オレは爪で深々とヴァレンティノの体を大きく斬り裂いた。
傷が瞬時に青く燃え上がり、ヴァレンティノの全身に燃え広がっていく。
ヴァレンティノ
グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
ヴァレンティノの羽が青く燃え、凍って、砕けた……。

全身を凍てつかせながら、ヴァレンティノは力なく床に落下した。
ちょうど、アラスターの血の効力が切れ、変身が解けた。あれほど少量の血ならば数分がせいぜいだろう。
あなた
アラスター!
オレはアラスターに駆け寄った。アラスターはすでになんとか立ち直り、笑顔で出迎えた。
アラスター
すばらしかったです!
ああ! 本当に……まだこれほどの奥の手を隠していたとは……あなたは何というエンターテイナーでしょう!
あなた
アラスター! 傷は?
大丈夫なのか!?
アラスター
ニャハー! あなたがヴァレンティノを引き付けてくれたおかげで、大分傷口の修復が進みましたよ。ご安心を。
あなた
よ、よかった………。
オレは傷に障らないように、そっとアラスターを抱きしめた。
あなた
勝てたのはあんたのおかげだ。
……ありがとう。
アラスター
いえ、あなた自身が、あなたの《呪い》に打ち勝つ強さを手にしたんですよ。
互いに見つめ合い。
自然とオレたちは唇を寄せ―ーーーー。
チャーリー
あなた! アラスター!
ヴァギー
無事!?
そっちはどうなってるの!?
なぜか、急に空間がホテルと繋がり、どやどやとお嬢たちがやってきた。
アラスター
ちょっと、いい所でしたのに……。
あなた
お、お嬢!? なんでこっちに……。
互いに無事を喜びあうも、オレは困惑した。
ルシファー
なに、私が呼び出した。
ルシファー
今回の舞台の終幕を全員で
見届けようじゃないか。
急に天井の辺りで金色の光が瞬いたと思ったら……六枚の翼を羽ばたかせ、誰かがゆっくりと降り立った。
お嬢が驚いて叫んだ。
チャーリー
パパ!
パパ? ……ってことは……………。
あなた
お………お嬢の御父上様!
地獄の王、ルシファー陛下!?!?
オレは目を向いた。
な……なんたる僥倖!!!!
お嬢によく面影を映すりんごほっぺ。金色の髪、白い肌!小柄な体躯に堂々たる威厳を宿し、品格漂う純白の衣装。蛇とリンゴの意匠の帽子にステッキ。
かつて、大天使として天国に君臨しながら、地獄に堕とされた美しき《暁の明星》………。

はわわわわわわわわわ………………!!!!!!
カッコいい! まぶしい! 尊すぎる!!!
アラスター
あなた。なぜ、
私の背中に隠れるのですか?
あなた
バ、バカ野郎! 偉大なるお嬢の、
偉大なる御父上様だぞ!
恐れ多すぎて直視できるか!
アラスター
ハ! このチビオヤジは
あなたが思っているような………。
ルシファー
おい、ラジオボーイ! 
今なんて言った!?
おっと? どうやらアラスターとルシファー陛下は仲が悪いらしい。
ルシファー
おお、キミがあなた君だね。
娘が大変に世話になった。
ルシファー
体を張って娘を守ってくれたこと、
礼を言いたかったんだ。
あなた
い、いえ! 勿体ないお言葉で
ございます……と、
陛下に伝えてくれ、アラスター。
アラスター
私は腹話術の人形ではありませーん。
恐れ多すぎてアラスターの背中から離れられないオレ。

と、その時、ヴァレンティノがようやく身を起こした。さすがの暴君も、そこに地獄の王の姿を認めては、ブチ切れるどころか青ざめるばかりだ。
ヴァレンティノ
へ、陛下……これは――――。
ルシファー
黙れヴァレンティノ。
誰が発言を許した?
ひと睨みでヴァレンティノを黙らせる……。
か………カッケーーーーーー!!!!!
さすがお嬢の御父上様!!!
ルシファー
コホン、それでは………。
役者のように勿体ぶった仕草で、我らが地獄の王はおっしゃった。
ルシファー
色々と物騒で面倒なことが続いたが、
舞台は終幕だ。今回の幕引きを、
このルシファーが行おう。



        続く

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