お兄ちゃん達に近づく作戦を休んでる間も恐怖症を治そう作戦は続く。
お兄ちゃん達と(一定の距離はとりながらも)いちごミルクを飲みながらお話する。
お兄ちゃん達がゲームをしている(私にはさとみくんがジェルくんをからかっているように見える)のを見る。
これらをして少し時間がたったらまた廊下に行ってお兄ちゃん達に近づく。
お昼と夜は(なーくんが用意してくれた私用のミニテーブル)で4人でご飯を食べる。
そんな一日を繰り返していた。
そして1週間もすると残り1mの距離までスタスタと行けるようになった。
でない。その1歩がでてくれない。
1週間以上お兄ちゃん達と一緒に暮らして頭の中ではこの人たちは怖くない、というのを理解している。
けど、
私の心のどこかがまだ拒んでいる。
あぁ、今日もここまでか。と私は自分が嫌いになりそうになったとき
と、急に今まで喋らなかったさとみくんが言った。
私とジェルくんは?だったがなーくんは何かわかったようだった。
と言うが早いか、さとみくんは私の目をじっと見て……
1歩前へ出て私の目の前に来た。
近い。大きい。こんなにも男の人の近くに来たのはいつぶりだろう。私は咄嗟に目をつぶる。
初めてジェルくんに会った時もこんなに近くまではいなかった。
“逃げれない”という感覚が全身を駆け巡っている。
恐怖で体が震えそうになった時
なーくんとジェルくんも1歩前に出て言ってきた。
私はうっすらと目を開ける。
すると見えたのは私の目線に合わせてしゃがんでくれたお兄ちゃん達だった。
優しい目で、声でそう言ってくる。
あの時の、あの男の人の冷たくて感情のない目と声とは違う。
私はいつの間にか震えも止まりしっかりと目を合わせられるようになった。
2人はとても嬉しそうに言った。
そしてジェルくんは
と目をうるうるさせながら手を頭に伸ばしてきた。
殴られるッッ…?
私はまた目をつぶってしまう。
しかし目をつぶっても殴られはせずただ頭を撫でられた。
ナデナデナデナデ
とお兄ちゃん達がもがき始めました。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。