第33話

31.危機
69
2025/09/07 08:22 更新
永愛のお母さんが植物状態になった時、
永愛はこの世の終わりみたいな顔してた。



…だからおれ、聞いたんだ。


「永愛、大丈夫?」って、だけど。
永愛(とあ)
大丈夫なわけ…ないだろ、

俺のせいでこうなった。
俺が…居なければ…





おれは、なんにも言えなかった。
だってずっと能力から逃げてきたおれが、
ずっと自分の能力と向き合ってた永愛に
言えることなんて1つもない。

でも苦しそうな顔してる永愛のこと
放っておけなくて、おれは今まで通り
普通に接してた。間違ってたのかもしれないけど。




中学に入って、別々のクラスになることが増えて、
別の部活に入って、
自然におれたちの距離は遠くなっていった。





中二の秋、体育祭の企画委員の募集がかかった。
相変わらず勉強が苦手でバスケくらいしか趣味が
無かったおれはせめて委員会くらい入ろうって思った。
別にそれで永愛に適う訳でも、
母さんに認められる訳でもないのに。



企画委員には永愛も入ったみたいだった。
相変わらず、凄いなって思ってたっけ。






委員会が一緒になって、少し永愛と話す機会が増えた。
久々に話した永愛は、昔とおんなじ喋り方で、
ちょっと安心した。



体育祭前日、おれは浮かれてた。
目立った失敗もしてなかったし、
永愛とも話せてたし、何より楽しかったし。

浮かれてたんだ。







_____自分の頭に向かって控え室用の
支柱が倒れてきてることに気づかないくらい。




先生がおれの名前を呼んで、初めて
その状況に気づいた。



今思えば能力を使えばどうにかなったのかもしれない。
でもずっと自分の能力から逃げてきたおれは
そんな事考えることも出来なくて。
咄嗟に動こうにも体が言う事聞かなくて。

あっ、死ぬかも。なんて考えながら目を瞑った。






目を瞑って1秒たつ。
____何も痛くない。


3秒たつ。
____何の音もしない。


5秒か6秒たったくらいで不思議に
思っておれは後ろを向いた。



そこにはーーー、

おれが居る場所とは全く離れた所で倒れた支柱と、
対角線上で遠くにいたはずの永愛がいた。


一瞬でわかった。永愛は能力を使ったんだ。
そうじゃなきゃ数秒でここまで来ることなんて
不可能だから。


能力を使った。しかも、多分おれのために。
嬉しかった。最近は全然話せてなかったのに、
わざわざおれのために能力使ってくれたのが。


だから、「ありがとう」って、
言おうとしたんだ。したのに、





______でも、

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