永愛のお母さんが植物状態になった時、
永愛はこの世の終わりみたいな顔してた。
…だからおれ、聞いたんだ。
「永愛、大丈夫?」って、だけど。
おれは、なんにも言えなかった。
だってずっと能力から逃げてきたおれが、
ずっと自分の能力と向き合ってた永愛に
言えることなんて1つもない。
でも苦しそうな顔してる永愛のこと
放っておけなくて、おれは今まで通り
普通に接してた。間違ってたのかもしれないけど。
中学に入って、別々のクラスになることが増えて、
別の部活に入って、
自然におれたちの距離は遠くなっていった。
中二の秋、体育祭の企画委員の募集がかかった。
相変わらず勉強が苦手でバスケくらいしか趣味が
無かったおれはせめて委員会くらい入ろうって思った。
別にそれで永愛に適う訳でも、
母さんに認められる訳でもないのに。
企画委員には永愛も入ったみたいだった。
相変わらず、凄いなって思ってたっけ。
委員会が一緒になって、少し永愛と話す機会が増えた。
久々に話した永愛は、昔とおんなじ喋り方で、
ちょっと安心した。
体育祭前日、おれは浮かれてた。
目立った失敗もしてなかったし、
永愛とも話せてたし、何より楽しかったし。
浮かれてたんだ。
_____自分の頭に向かって控え室用の
支柱が倒れてきてることに気づかないくらい。
先生がおれの名前を呼んで、初めて
その状況に気づいた。
今思えば能力を使えばどうにかなったのかもしれない。
でもずっと自分の能力から逃げてきたおれは
そんな事考えることも出来なくて。
咄嗟に動こうにも体が言う事聞かなくて。
あっ、死ぬかも。なんて考えながら目を瞑った。
目を瞑って1秒たつ。
____何も痛くない。
3秒たつ。
____何の音もしない。
5秒か6秒たったくらいで不思議に
思っておれは後ろを向いた。
そこにはーーー、
おれが居る場所とは全く離れた所で倒れた支柱と、
対角線上で遠くにいたはずの永愛がいた。
一瞬でわかった。永愛は能力を使ったんだ。
そうじゃなきゃ数秒でここまで来ることなんて
不可能だから。
能力を使った。しかも、多分おれのために。
嬉しかった。最近は全然話せてなかったのに、
わざわざおれのために能力使ってくれたのが。
だから、「ありがとう」って、
言おうとしたんだ。したのに、
______でも、












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。