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夜7時ごろ
昨日の任務の報告書を出した帰り、
寮の共用スペースの前を通りかかったとき、ソファに見慣れた後ろ姿があった。
声をかけても、反応はない。
不思議に思って近づくと、どうやら寝ているらしかった。
ソファにもたれかかるように座っていて、首が少し傾いている。
テレビはつけっぱなしで、音量だけがやけに小さい。
一瞬、起こすべきか迷う。
だがこのままじゃ、さすがに風邪を引きそうだ。
小さく息をついて、そっと肩に手を伸ばす。
軽く揺らすと、糸師先輩の眉がわずかに動いた。
それだけで、目は開かない。
思っていた以上に、深く眠っているようだった。
もう一度肩を揺らしてみたが、やはり起きる気配はない。
起こすのを諦めてテレビの電源を切ると共用スペースは一気に静まり返った。
周囲を見回し、誰もいないことを確認してから、棚に置いてあったブランケットを一枚取る。
小さく呟いて、あなたの肩にそっとかける。
するとあなたは無意識のまま、それを引き寄せた。
少しだけ様子を見てから、踵を返す。
そう思って、その場を離れようとしたときーー
糸師先輩に何かを言われて、思わず足を止めて、振り返る。
目は閉じたまま、かすれた声。
寝言のはずなのに、その一言だけは妙にはっきりしていた。
それだけ言うと、一度だけブランケットを見てから、静かに共用スペースを出た。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!