同級生を殺した。
頬を抓るような冬風に、じんわり温もりが滴る。
まるで音叉を潜らせた水面のように、腕の先は血飛沫に染まっていて、青く澄んだ山のような景色に似つかない、鉛の削れた匂いがした。
私の全身の感覚は冴えていて、膝下がピリピリと痛む。
その前に、一人の男が横たわっていた。
包丁に抉られたような傷が頭部に残っていて。
微かに見える髪色に、茅色を思わせた。
首から先は、無い。
あまりに無惨なその姿に、ぱたりと腰が抜けた。
無意識に瞼を動かすと、睫毛が少し歯痒い。
その睫毛を抜け落ちるように、目から水滴が零れ、私の頬を薄く濡らした。
私は今日、元幼なじみの同級生を殺した。
手にナイフを握り、その骨の髄を削り取った。
「何やってんだ、バカ」
心とは裏腹に、声は冬の風のように澄んでいて。
俺は何故こんなことを、なんて出遅れる後悔が脳内を駆け巡ることが無かったことに、一種の恨みを覚えた。
きっと、俺はこの先、辛い人生を送るのだろう。
遠くない未来に "人殺し" というレッテルを貼られて、全てに人に蔑まれて。
...死刑だろうか?
なんて、静かな常識に怯える自分が見苦しい。
別に、死ぬのは怖くない。でも、嫌だ。
息を殺して私は泣いた。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!