第3話

神は人間に救いを乞う
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2022/02/04 08:36 更新
同級生を殺した。


頬を抓るような冬風に、じんわり温もりが滴る。
まるで音叉を潜らせた水面のように、腕の先は血飛沫に染まっていて、青く澄んだ山のような景色に似つかない、鉛の削れた匂いがした。
私の全身の感覚は冴えていて、膝下がピリピリと痛む。
その前に、一人の男が横たわっていた。
包丁に抉られたような傷が頭部に残っていて。
微かに見える髪色に、茅色を思わせた。

首から先は、無い。

あまりに無惨なその姿に、ぱたりと腰が抜けた。
無意識に瞼を動かすと、睫毛が少し歯痒い。
その睫毛を抜け落ちるように、目から水滴が零れ、私の頬を薄く濡らした。

私は今日、元幼なじみの同級生を殺した。
手にナイフを握り、その骨の髄を削り取った。

「何やってんだ、バカ」

心とは裏腹に、声は冬の風のように澄んでいて。
俺は何故こんなことを、なんて出遅れる後悔が脳内を駆け巡ることが無かったことに、一種の恨みを覚えた。

きっと、俺はこの先、辛い人生を送るのだろう。
遠くない未来に "人殺し" というレッテルを貼られて、全てに人に蔑まれて。

...死刑だろうか?

なんて、静かな常識に怯える自分が見苦しい。
別に、死ぬのは怖くない。でも、嫌だ。

息を殺して私は泣いた。


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