shk side
意識は戻ったものの、言葉を発することも身体を起こすこともできないゼンにきりやんは安静にするように言い渡した。
ゼンさんが何か言いたげな表情をしていたが、きりやんは気づかないまま部屋を去る。たぶん、Nakamuあたりに呼ばれたのだろう。
ゼンさんを見ればじっと俺のインカムを見ては苦しそうに顔を歪める。
"灰"
それは彼女が消えた時、最後に残ったもの。数gしかない灰色の砂を、彼はお守りのように小瓶に入れ、常に身につけていた。
そしてどうやらその小瓶を奪われたらしい。
遺灰を欲しがるような奴らなど、一つしかない。彼女を造り出した研究機関。昔、ゼンさんとジャスミンさんが殲滅したはずの研究者たち、生き残りがいたのか、はたまた彼女の研究資料がどこからか流出したのか。
あのスマイルでさえ、ジャスミンさんの研究資料は見つけられなかった。彼女は気にしないと言っていた。むしろ無い方が幸せだと……
ゼンさんは声を出さない代わりに俺の手のひらを指先でなぞり、言葉を伝える。
…"DNA"……?
"つくられる"
"あいつののぞまないこと"
"くりかえされる"
"とめないと"
ぞわ、と全身の鳥肌が立った。
まさか、こんなに滅したのに奴らはまだ合成獣の研究を進めるかもしれないと言いたいのだろうか?
"うん"
今回、きっとゼンさんは動けない。ならば、「俺達」が動けばいいだけ。まずNakamuに話を通そう。計画も全部、それからだ。
"シャークんさんたちなら、だいじょうぶ"
少し彼は笑った。何日ぶりだろう、ゼンさんが笑った顔を見るのは。
彼の為にも、彼女が安らかに眠る為にも、一刻も早く終わらせてやらないと。永遠の苦しみなんて、あってたまるかよ
どうやら一足先に説明してくれていたらしい。そういう細かい気遣いができるところが、スマイルという良いやつだ。
渡された資料をパラパラと流し見た。
ネズミを用いた実験から人間を使うまでの経緯が書いてあったり、どのような要素を入れるか、などがメモされている。
ピピッ、インカムがなる。
珍しく、Nakamuがそんなことを言う。
びっくりして固まっていると、Nakamuが少し気まずそうに視線を逸らす。
俺は軽く荷物の整理をしたあと、顔を隠して城下町へと繰り出した。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。