第8話

day 7
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2025/10/17 23:47 更新



「 そんなわけ、あるかよ…… 」


クロムの言葉を遮るように、
椅子を引いた音が部屋に響いた。


俺は研究室を飛び出し、無言で夜の道を走る。


息が切れて、
喉が焼けるような感覚があった。


心臓の音だけがうるさくて、
呼吸が追いつかないほど思考が暴れている。


家までの道が、やけに長く感じて、
ビルの灯りがまぶしくて、

でも何も見えてないような…


赤信号が目の前に立ちはだかり、
足を止める。


「 いるはずだろ
……いたじゃねぇか、昨日まで 」


走る。

ただまっすぐ、あの部屋に。



* * *


鍵を開けて玄関を開けると、
キッチンの灯りがついていた。


テーブルにマグカップがふたつ。
その奥から、いつもの声がする。


「 おかえり 」


リビングには、いつも通りのあなたがいる。


ソファに座って、
俺の方を見て、微笑んでいた。


ーー ああ、やっぱりそうだ


クロムの勘違いだ。
ちゃんと、ここにいんじゃねぇか。


そう思ってほっとしたと同時に、
感じた違和感。


窓から差し込む街灯の光を受けて、
あなたの輪郭だけが、わずかに淡く滲んで見えた。


透明になりかけたガラスみたいに、
どこか焦点が合わない。


そのまま、あなたは話し出す。




「 千空と、もっと一緒にいたかったなあ、 」




言葉は穏やかで、
まるで日常会話みたいに続いていく。



「 千空って、
1人になるとすぐ生活が崩れるでしょ?

ご飯は?洗濯は?
寝る時間めちゃくちゃにするでしょ? 」



笑ってるのに、
声の奥に涙がにじんでいるように聞こえる。


「 誰が千空の頭、撫でてあげるの?

……あ、でも、
他の女の子に撫でられるのはやだな。
すっごくやだ。

それならまだ、
ロボットに撫でられてたほうがいいかも 」



いつものような調子であなたは笑う。


俺は、
声が出なかった。



それでも脳が、ようやく思い出していく。



7日前の、交差点、
あの時のことを ーーー





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