*******続き*******
それから数日。
救命の朝は、今日も容赦なく始まった。
あなたはみんなの前では相変わらず、
背筋を伸ばし、ニコニコと笑う。
けれど、それを見ている同期たちの胸には、
小さな違和感が積み重なっていた。
白石が、さりげなく声をかける。
あまりに即答すぎて、
白石は一瞬、言葉を失った。
隣で緋山が、すっと視線を送る。
緋山は腕を組み、溜息をつく。
緋山の言い方はきつい。けど、目は優しい。
藤川が苦笑いで口を挟む。
あなたは目の下を指で触りながら、
言葉を詰まらせる。
白石が続けた。
冴島が眉をひそめる。
言いながら、視線が泳ぐ。
やわらかい声だった。
だから余計に、居心地が悪くなった。
そう言うと、
あなたは逃げるように部屋を出て行った。
白石が声をかけるも、もう遅い。
白石はそのやり取りを見ながら、
胸の奥に小さな引っかかりを残した。
昼前。
あなたは担当患者のベッドサイドで、
モニターの波形を確認していた。
あなたはほっと息をついて笑った。
――この瞬間があるから、頑張れる。
つくづくそう思う。
しかし、
ここ最近、視界の端が時々、ちらつく。
数回瞬きし、深呼吸。
そこへーー
緊急コールが鳴った。
無機質なアナウンスが、救命センターに響く。
「救急搬送!交通外傷!意識レベル低下、血圧低下! 到着まで3分!」
空気が一気に張る。
緋山が真っ先に動いた。
*
処置室。
ストレッチャーが勢いよく滑り込む。
声が交差する。
あなたは止血用のガーゼを手に取り、
出血部位を圧迫しながら、白石の指示を拾った。
針を進める。
テープを引きちぎる指が、わずかに震えた。
一瞬手が止まる。
その違和感を、藍沢は見逃さなかった。
答えた直後。
ぐらり……床が傾く感じ。
視界の端が、ふっと歪んだ。
頭の奥が、熱い。
なのに、身体の芯は冷たい。
息が浅い。
喉もひりつく。
血の気がさっと引く感じがした。
次の瞬間、目の前が真っ暗に。
——ガシャン!
処置室に、
金属トレイが床に散らばる鋭い音が響いた。
その瞬間、
あなたの身体がふらりと前に崩れ落ちる。
反射的に伸びた藍沢の腕が、
床に倒れ込む寸前であなたを抱き止めた。
返事はない。
呼吸は浅く、額には冷や汗。
藍沢はそのまま彼女を支えながら、首元に指を当てた。
三井は手を動かしながら、あなたの方を覗き込む。
冷たい声。
言いかけて、三井は言葉を切った。
瞬時に視線を切り替える。
処置室の中で、空気が二つに割れる。
__
思わず漏れた言葉に、自分で気づいて唇を噛む。
緋山はそのまま袖をまくり、カフを巻いた。
数字が表示される。
藍沢はあなたの肩に手をかけ、静かに声をかける。
だがーー
やはり反応はない。
藍沢は聴診器を耳にかけた。
スクラブの裾から聴診器を差し入れ、心音を拾う。
藍沢の眉が、わずかに動く。
聴診器を当てたまま、もう一度確認する。
規則的なはずのリズムが、ほんの一瞬、跳ねた。
一瞬、空気が張り詰めた。
緋山は咄嗟にあなたの顔を見る。
意識は戻らず、呼吸は浅い。
緋山は一瞬、言葉に詰まる。
藍沢は顔を上げ、視線を遠くに投げる。
藍沢は視線を戻し、口を開いた。
*
モニター心電図の機械を引いて戻ってきた緋山が、
ふと藍沢の手元を見て目を見開いた。
ハサミ…✂️
淡々とした声。
確かにそうだ。
スクラブは、前が開かない。
でもーー
一歩、前に出る。
言いかけて、言葉が詰まる。
藍沢は手を止めず、視線も上げずに言った。
視線を逸らさず、きっぱりと言った。
ハサミをひょいと取り上げる。
一瞬、沈黙。
藍沢は眉をひそめたが、すぐに舌打ち混じりに言う。
くるりと背を向ける。
緋山は小さく息を吐き、あなたの方へ向き直った。
シャリ…
ハサミを入れる音が静かに響く。
スクラブが開かれ、緋山は素早く電極を貼っていった。
そして、貼り終えると、
すぐにタオルをかけ、肌を覆った。
藍沢はすぐに振り返り、モニターに視線を移す。
二人は手早く役割を分担する。
緋山が病院着を持ちに行き、
その間に藍沢が点滴ラインを整理する。
着替えまで済ませると、
ストレッチャーに乗せ、処置室を出た。
*
緋山は歩きながら、あなたの顔を何度も確認する。
一瞬、言葉が詰まる。
藍沢は前を向いたまま、低く答えた。
*
病室に到着。
ベッドに移し、点滴とモニターを再接続する。
機械音が一定のリズムで鳴り始めた。
ベッドサイドで、緋山はしばらく動かなかった。
あなたの手元に視線を落とし、指先をそっと整える。
ーーそのときだった。
微かな声。
まぶたが、ゆっくりと開いた。
*****続く*****
作者より。
またかな〜り、
久しぶりになってしまいすみません🥹🥹
今回は、🍆さんからいただいたリクエストです!!

ありがとうございます💕
目が覚めてからは、まだ続き決めてないので、
何かアイデアとかあれば気軽にコメントください!
ではでは〜




















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!