*******続き*******
あの夜を境に、同期の空気は変わった。
それまではライバル心ばかりが先に立っていたのに、
あなたの下の名前が涙を見せたことで、
互いの距離がぐっと縮まった。
翌日からの勤務。
現場に出れば相変わらず緊迫しているが、
休憩室に戻ると、どこか柔らかい雰囲気が漂っていた。
藤川が軽口を叩けば、
白石が即座にフォローし、
あなたの下の名前が恥ずかしそうに笑う。
緋山もいつものきつい言葉の裏に、
どこか妹を見守るような視線を隠せないでいる。
藍沢は藍沢で、変わらず冷たく淡々としているのに、
その言葉が以前より棘を感じさせなかった。
こうして――
彼らはようやく「同期」として
ひとつになりつつあった。
数日後の夜。
珍しく全員が同じタイミングで上がれた日。
藤川がぽつりと切り出す。
白石が返すと、冴島も笑みを漏らす。
素っ気ない返事をしつつも、断る様子はない。
緋山がさっさと荷物をまとめる。
そう言ってあなたの下の名前の肩を軽く押した。
不意に名前を呼ばれ、
あなたの下の名前は慌てて返事をした。
こうして、フェロー5人と冴島――
はじめて全員揃って、街へと繰り出すことになった。
居酒屋
仕事を終えた人々でにぎわう店内、
奥の座敷に案内された。
緋山にぐいっと腕を引かれて、
あなたの下の名前は端の席に押し込まれる。
テーブルの真ん中には枝豆や唐揚げ、
焼き鳥の皿が並び始め、
店員が大きなジョッキを次々と置いていく。
ジョッキがぶつかり合い、泡がこぼれる。
全員が揃ってテーブルを囲むのは、
これが初めてだった。
ぐい、といく藍沢。
それに負けじと、緋山も白石も。
藤川は調子に乗って最初から日本酒に手を出し、
冴島は涼しい顔でビールを片手に笑っていた。
一方のあなたの下の名前は……
最初の何口かで、頬がほんのり熱くなった。
あなたの下の名前は恥ずかしそうに
ジョッキを両手で持ったまま俯いた。
藤川が容赦なく突っ込む。
白石が呆れたように返すと、
冴島も肩をすくめた。
藤川は顔をしかめるが、
あなたの下の名前は思わず笑いをこぼした。
藍沢はクールに言い放つ。
緋山が鼻で笑いながらも、
あなたの下の名前のグラスにさりげなく水を注ぐ。
その後も、どんどんお酒が運びこまれ、
和やかな雰囲気で会話が広がった。
緋山が割って入り、枝豆に手を伸ばす。
藍沢と緋山がいつもの調子でやり合い、
白石が慌てて止めに入る。
見慣れた光景に、周囲は笑いに包まれた。
あなたの下の名前は心の中で
そんなことを考えながら眺めているとーー
藤川がウーロンハイを手渡そうとする。
白石がすかさず止めに入る。
緋山もにやりと笑い、わざと軽口を叩く。
あなたの下の名前は照れくさそうに視線を落とす。
それを見て、緋山はさらに追い討ちをかける。
緋山は自分の水が入ったグラスを、ガンっと差し出す。
あなたの下の名前は慌ててグラスを、
自分の方へ引き寄せる。
ふたりのやりとりを、
みんな微笑ましく見ていた。
藍沢も、小さく笑う。
時間が経つにつれて、
テーブルの空気はますますくだけていった。
緋山は声を立てて笑い、
冴島は「はいはい、うるさい」といいながらも
楽しそうにグラスを傾ける。
そして、ふとした間に緋山があなたの下の名前に視線を向けた。
あなたの下の名前の手がぴたりと止まった。
持っていたグラスを机に置き、
目を丸くして緋山を見る。
あなたの下の名前がしどろもどろになった瞬間、
藤川が身を乗り出した。
あなたの下の名前は耳まで赤くなり、
グラスを握ったまま固まる。
そんな彼女を逃がすまいと、緋山が追い打ちをかける。
テーブルの周りは一気に盛り上がる。
あなたの下の名前は完全にうつむいた。
小さな声が、ざわめきの中に落ちる。
一瞬の沈黙。
そして――
あなたの下の名前は両手で顔を覆い、
消え入りそうに笑った。
必死に首を振るあなたの下の名前。
その姿に冴島は「可愛いなぁ」と、
思わず口にしてしまう。
藍沢もグラスを片手に、静かに笑っていた。
その様子に、緋山がニヤリと笑ってさらに追い詰める。
藍沢は無表情でジョッキを口に運びながら、
わずかに片眉を上げた。
白石が笑い、
藤川は「はいはい!じゃあ俺にも!」と身を乗り出す。
緋山があなたの下の名前に耳打ちする。
緋山はニヤニヤしてる。
どっと笑い声が広がり、
藤川は胸を押さえ、大げさに倒れる。
慌てるあなたの下の名前の髪を、緋山がくしゃっと撫でる。
あなたの下の名前はますます顔を赤くして俯いた。
それからというもの、
みんなの「からかいターゲット」は
完全にあなたの下の名前に集中した。
緊張と遠慮ばかりだった空気は、
もうどこにもなかった。
そこにあるのは、
年上の兄姉たちに可愛がられる妹――
そんな温度感だった。
*****続く*****


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!