あれから俺も教室へ戻り、席に座った。
何も聞いてない、大丈夫、いつも通り……
どれだけ濁しても、秋汰はしつこく問いかけてくる。
そんなに質問攻めされても、何も答えたくない。
つーか、何がそんなに気になるんだよ……
秋汰は気まずそうに目を逸らしながらそう言った。
嫌って……何でだよ……
” でもさ、茜くんも津村くんのこと好きだと思うよ?”
さっきの女子の言葉が脳内に響き渡る。
コイツが俺の事好き……?
告白されたのを気にするのも、嫌だったって言うのも……それが理由ってこと?
目に見えるレベルの慌てっぷり。
そして、なんか視線を感じてそこを見ると、さっきの女子が笑顔で頷いている。
……はぁ、マジでどーすればいいんだよ。
仮に、コイツの好きな人がマジで俺だったとして、今ここで気持ちを告白されても……なんて言えばいいか分かんねぇ。
もちろん付き合うなんて考えは毛ほどもない。けど……バッサリ断ってしまうのも、可哀想な気もする。
いつもキラキラした目で俺に話しかけてきて、ベタベタ引っ付いてくる。それは全然嫌じゃない。
でも……かと言って付き合えるか? って聞かれたらそうじゃない。
そしてこの話は、先生が入ってきてホームルームが始まったことによって、終わってしまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!