「きゃ~~、ディアン様よ!あちらにはライアン様も!!」
グラウンドに黄色い歓声が湧き上がる。ここまで、叫びまくれるご令嬢たちには頭が上がらないわ。その声を全て応援に回してほしいものだわ。
「続きまして、リレー。今年の選手は強そうですね。」
待って待って、リレーする選手の中にそんな強敵が居るの?私、負けたも同然じゃん。まっ、いいか。私、もとより速くないし……
「それでは選手の紹介を致します!ロベリア嬢、コーデリア嬢………カーネリア嬢位置についてくださーい」
うわ~、誰と走るのかな?って思ってたけど、まさかの将来、女騎士希望の人二人が居るのはつらくないか??もう、体格からして怖いんだけど?
「位置に、よ~いドン!」
あっ、ヤバい。スタート転けちゃった!真面目に恥ずかしいんだけど……
「カーネリア嬢、大丈夫ですか?」
アレ?アレレ?競技中って助け合いオッケーでしたっけ?なんで戦う相手が、私に声をかけて、そのままお姫様抱っこでゴールまで向かっているわけ?状況が読み取れないんですけど??これって普通なの?
「お~っと、お姫様抱っこをしたロベリア嬢とお姫様抱っこされたカーネリア嬢が見事、同率一位です!」
ロベリア嬢と言えば、アスフェルト家の娘だったわ。そういえば!アスフェルト家とオズベルト家ってとても深い仲みたい。アスフェルト家は騎士の家系で、代々、王家に仕えてる。そんなアスフェルト家を作ったのがオズベルトの者だったらしい。誰かは私も覚えてない。会ったことないし……それで、アスフェルト家は王家とオズベルトに忠誠を誓う。と約束をしたらしい。
「お嬢様、お怪我は?御守りできず不甲斐無いばかりです。」
私の膝に出来た掠り傷を見てロベリアはずっと謝り続けている。本当にオズベルトへの忠誠心は代々欠けないで居るのだと、実感できる。
「大丈夫よ。こんなの掠り傷だもの!貴女のほうが大丈夫だった?私、結構重かったでしょ?」
「いいえ、お嬢様は軽すぎます。もっと、食べてください」
真顔でそんなカッコイイこと言われたら照れちゃうんですけど!?何よりロベリアはとても中性的なお顔の持ち主で、男になっても絶対に違和感がなさそう。
「カーネリア!大丈夫ですか?」
「ライアン殿下……」
観客席から全力で走ってきたであろう汗だくのライアンが駆け寄ってきた。心配そうな顔をして、それでいて何かに怯えるような顔をして……
「なんて顔してるのよ。ただ膝を怪我しただけよ。」
「殿下。カーネリア様は怪我をなさっています。もしよろしければ、殿下が医務室までカーネリア様をお運びしてください。」
「ちょっ……」
「分かった。私が連れて行こう。」
ウソでしょ……ちょっと前にライアンと喧嘩みたいになって話する機会減ってたのに……これじゃ、気まずい関係の二人が一緒に居るってことになるじゃん!
「では、お頼みしますね」
「ああ」
ん?まさかのお姫様抱っこで連れて行くつもりじゃないよね??そんなことしたら恥ずかしいんだけど……
「あのー、ライアン殿下、この体制は?」
「脚を怪我したのだから大人しくしてろ。」
「私、自分で歩けます!!」
「ダメだ。」
ライアンは、この体制を変えるつもりなんてないらしい。どんなに私が叫んでも聞いてないふりをする。
「ライアン様がカーネリア様を!!二人は本当にお似合いね~」
「カーネリア様はいいな〜ライアン殿下にあのように接して貰えて……」
そんなことを言っているあなた達と変われるものなら変わってほしいわ。どんだけ大変で恥ずかしいか分からないでしょ!?私の立場になってみなさい!恥ずかしくて死ぬわよ!ていうか、ライアン殿下。早く私を降ろせ!!こんな姿、親に見せられるの??私は絶対にいやよ!こんなことになるなら早く婚約破棄するべきね!もう、そうしましょう!婚約破棄ができれば、私が死ぬ運命なんてなくなるもの!!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!