「あなた、ちょっと来て」
姉にそう呼ばれて部屋にいた私は下へ降りる。
リビングに入った瞬間、私はその場で止まった。
柔らかく笑うその人。
隣で幸せそうにその人を見る姉。
姉が初めて彼氏を家に連れてきた。
優しそうな声。見た目とかなりギャップのある話し方。
姉を見る時の少しだけ甘くなる表情。
「あなた、どうかした?」
この時はまだ、ただの”姉の彼氏“だったはずなのに。
気づいたのは、本当に些細なことだった。
帰り際、玄関で。
そう言われた時。
心臓が、ほんの少しだけ大きく鳴った。
相手は姉の彼氏だ。
まさか、まさかね。
きっと気のせいだと思った。
next.












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!