思えばここに来るまで長いような短いような道のりだったと信忠は思う
あの高級バーに、いけすかない賞レースを優勝した芸人が飲みに来なければ、ここにはいなかったのだから
しかも、あの時優勝した芸人は、今回から審査員として参加している
向こうは覚えていなくても、信忠にとっては忘れられない顔だった
ドキドキしながら信忠と洋子はステージを見守る
ステージではくじを引き、そこの番号にかかれたコンビが1組、また1組と部屋を出ていった
そして5組目……ついに信忠と洋子が呼ばれる
準決勝以上の緊張感が2人に襲い掛かっていたが、2人はお互いに微笑みあった
2人の間には、誰にも入り込むことのできない絆ができていたからだ
しかし、現実はそこまで甘くはない
決勝戦に入り込めたのは奇跡
だが優勝できるのは奇跡だけではなく、やはり実力も必要不可欠だ
信忠と洋子は、再び会場を沸かすことはできたものの、審査員からは2票しか入らず2位となった
今年の優勝コンビが、あまりにも強かったというのもある
だからだろうか
2人も、このコンビニは負けても仕方がないと思えてしまったのだ
信忠も洋子も、まだまだ自分たちの実力不足を思い知る結果となったが、再びここに来て、今度こそ優勝をしようと決意し合った
ただ賞レースで優勝ができなかったので、洋子は信忠に告白するのをやめた
もしここで告白をして、振られて、関係がぎくしゃくしてコンビ解散となったらもったいないと思ったのだ
洋子もまた、本気でお笑いの道に進む決意をした
決意をしたのだが――













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!