交番は、恐ろしくつまらないところだ。舞い込んでくるのは道案内、落とし物、探し物、迷子、落とし物、落とし物。みんなモノを落としすぎている。落ちても気がつかないモノなんて、最初から買うなという話だ。
交番の受付に立って近所のおばあさんと話し込んでいた俺のペア、大世古朋奈がデスクに引っ込んできた。憧れの警察官になれて嬉しいのか知らないが、とにかく声がデカくやる気に満ち溢れている女だ。俺はこの女が苦手で、正直あまり関わりたくない。でもペアだから仕方がない。
睨めば怯むと思ったが、大世古は逆に睨み返してきた。気が強い女というのは可愛げがなくて憎たらしい。俺はため息をついてデスクのある部屋から出た。逃げたわけではない。相手にするのがバカらしくなったのだ。後ろから「もう。協調性がないんだから」とブツブツ言っているのが聞こえた。
俺が警察官になったのは、市民を守りたいとか、正義の味方になりたいとか、そんな正義感から警察官になったわけではない。
──警察官、という国家権力が欲しかっただけ。
今日は当直だ。俺にはやらなきゃいけないことがある。あの日、弟から届いたメッセージ。スマホを取り出してメッセージアプリを開いた。『宇野和彦』とのやり取りをタップする。
『兄ちゃん』
『俺殺されるかも』
『ヤバい組織に捕まった』
『もうダメだ』
『ごめん兄ちゃん』
『俺を追い込んだ奴は』
そしてその最後に届いたメッセージは『純也』だった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!