第2話

1小節目
494
2022/07/13 02:17 更新
朝、耳を劈くベルの音で起きた。
いつもよりも10分ほど早めに設定した目覚まし時計は、床に転がったまま鳴り響いていて、自分自身も又、床に転がっている。

まだ寝ぼけていた脳みそは、時計の針を見て覚醒する。
遊希 響輝ユウキ ヒビキ
やっば!遅刻する!
目覚まし時計に設定した時刻からとうに20分ほど過ぎていた。

クローゼットから取り出したハンガーにかけてあるのは、まだ一度も袖を通していない真新しい制服。
急いで着替え、寝癖を直しワックスで仕上げをする。

遊希 響輝ユウキ ヒビキ
よし。
部屋の中の姿見で自分の身なりが整っていることを確認し、スクールバッグと片手に荷物を持って下の階に降りる。

荷物は一旦玄関へ。
リビングへ戻り、その中の一角へ向かう。



遊希 響輝ユウキ ヒビキ
母さん、今日からは俺、高校生だ。
あの人が通ってた高校に今日から通えるんだ。
頑張るよ。勉強も、チューバも。
応援しててね!行ってきます。

そこにあるのは、3年前に死んだ母の遊希理華の仏壇だ。
線香をあげ、手を合わせ、今は亡き母の遺影に話しかける。

遊希 響輝ユウキ ヒビキ
ってやばい!遅刻すんだ!
部屋の電気は消えているか、コンロの火は全て消えているかなど、最低限の確認をし、靴を履いて玄関に置いた荷物を持って家を出る。
鍵を占めるのはもちろん忘れない。

遊希 響輝ユウキ ヒビキ
うわ〜…電車間に合うか?これ
学校へ向かうには電車を使う必要がある。
家から学校まで走っていくのはまず無理だ。
歩くのなんてもってのほか。
片手に持っている荷物は、自転車の籠には入らない。

そうなればするべきは唯一つ。
遊希 響輝ユウキ ヒビキ
……走るか。
そう呟いて駅まで走る。
片手の荷物が重いため、いつものようなスピードは出ないがそれでも歩くよりマシだ。
遊希 響輝ユウキ ヒビキ
っあ"〜…間に合った…
改札を通り、ホームについたとき、既に電車は来ていた。
だが駅に着いたばかりらしく、発車までになんとか乗ることができた。
ギリギリセーフだ。
祥生 竣サカキ シュン
駆け込み乗車はおやめくださーい
遊希 響輝ユウキ ヒビキ
うぉっ…
竣か…ビビったァ…
電車が発射するのと同時に、いきなり告げられた言葉にびっくりした俺は思いっきりバランスを崩してしまった。

祥生 竣サカキ シュン
そんなに驚かなくても良くない?
竣とは小学校の頃からの仲だ。
中学校も3年間一緒で、今日から同じ高校に通うことになる。
遊希 響輝ユウキ ヒビキ
じゃあ脅かすな!
祥生 竣サカキ シュン
ハイハイ、電車の中では静かにね〜
遊希 響輝ユウキ ヒビキ
てめぇ…
祥生 竣サカキ シュン
てか、それ持って走ってきたの?
え、何…まさか遅刻しかけたわけ?
遊希 響輝ユウキ ヒビキ
う"っ…
いきなりの質問だが、もちろん図星だ。
祥生 竣サカキ シュン
え〜…だから起こしてあげようかって言ったのに…
遊希 響輝ユウキ ヒビキ
へいへい、悪ぅござんした
俺は冗談めかしてそう返す
高校生になってまでそんなことできるか!
と心のなかでツッコみながら。
車掌
まもなく、木口、木口です
右側のドアが開きます
そうアナウンスが入った。
木口駅は俺たちの高校の最寄り駅だ。
遊希 響輝ユウキ ヒビキ
っしゃー行くか〜
祥生 竣サカキ シュン
良かったね。
間に合って
遊希 響輝ユウキ ヒビキ
お前まだ言うかこのやろー
そう軽口を叩きながら、開いた電車のドアから一歩踏み出した。

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