ベッドに寝転がったまま、俺は手元で震え続けているスマホの画面を眺めていた。
にじさんじ公式からのデビュー告知。そして、俺の最初のポスト。
ネットの拡散力っていうのは本当に恐ろしいもので、
画面を更新するたびにいいねとリツイートの数がアホみたいな速度で増えていく。
ピロリン、とDiscordの通知音が鳴った。
相手は、俺の担当になってくれた新人の女性マネージャーちゃん。
通称・胃薬さん(俺が今勝手に命名した)。
通話ボタンを押してスピーカーにすると、耳がキーンとするような大声が返ってきた。
通話の向こうで、マネージャーちゃんが盛大にため息をつく音が聞こえた。
胃痛の音がここまで聞こえてきそうだ。今度コンビニで胃薬買ってあげよう。
もちろん、俺の金……じゃなくて、今度競馬で勝ったら、だけど。
そんなやり取りをしながら、あっという間にデビュー当日の20時、つまり初配信の直前になった。
俺は防音室のデスクに座り、マイクの位置を調整する。
画面の向こうの待機枠には、すでに数万人のリスナーが固唾をのんで待っていた。
チャット欄は
¦ヤニカス美少女ってマジ?
¦いやガワは天使の輪あるし病みかわゴスロリやぞ
¦脳がバグりそう
と、早くも大荒れだ。
Discordの通話越しに、再びマネージャーちゃんの悲鳴に近い声が響く。
俺は手元にある百円ライターをカチカチと弄びながら、いつもの、ゆるーい声で返事をした。
お気に入りのタバコの箱をトントンと叩きながら、俺は不敵に笑う。
にじさんじに新しい風を、いや、ただのヤニの煙を吹き荒らしてやろう。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。