第3話

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2026/07/20 19:10 更新
Asobi
Asobi
……あー、通知うるさ
ベッドに寝転がったまま、俺は手元で震え続けているスマホの画面を眺めていた。
にじさんじ公式からのデビュー告知。そして、俺の最初のポスト。
ネットの拡散力っていうのは本当に恐ろしいもので、
画面を更新するたびにいいねとリツイートの数がアホみたいな速度で増えていく。

ピロリン、とDiscordの通知音が鳴った。
相手は、俺の担当になってくれた新人の女性マネージャーちゃん。
通称・胃薬さん(俺が今勝手に命名した)。
胃薬さん(マネージャー)
『Asobiさん!!! あの初ポストは何ですか!!!』
Asobi
Asobi
何ですかって、ただの挨拶ポストっすけど……
通話ボタンを押してスピーカーにすると、耳がキーンとするような大声が返ってきた。
胃薬さん(マネージャー)
『「リスナーの金で生きていきたい」って何ですか! 
 あと先輩方にいきなり奢らせようとしないでください! 特に加賀美社長!社長ですよ!?』
Asobi
Asobi
いやぁ、社長ってお金持ってそうじゃないですか。
高いお酒とか飲んでそうだし、奢ってもらえたらラッキーかなって
胃薬さん(マネージャー)
『ラッキーで社長に絡まないでください!……はぁ。
 でも、おかげで待機枠の伸びが新人の中では異常なことになってます。
 良くも悪くも、みんな「どんな奴が来るんだ」って戦々恐々としてますよ』
通話の向こうで、マネージャーちゃんが盛大にため息をつく音が聞こえた。
胃痛の音がここまで聞こえてきそうだ。今度コンビニで胃薬買ってあげよう。
もちろん、俺の金……じゃなくて、今度競馬で勝ったら、だけど。
Asobi
Asobi
まあまあ、マネージャーちゃん。
緊張しなくても大丈夫っすよ。俺、喋るのだけは得意なんで。
お姫様たちを沼らせるのも、旦那たちと酒飲むのも任せてください
胃薬さん(マネージャー)
『……本当に、初配信でタバコを吸うのだけは、絶対にやめてくださいね? 
 ビジュアルがツインテール美少女なんですから、
 最初は可愛い感じでいって、徐々に素を出していきましょう?』
Asobi
Asobi
あはは、善処しまーす
胃薬さん(マネージャー)
『声が全然善処するやつのそれじゃない!』
そんなやり取りをしながら、あっという間にデビュー当日の20時、つまり初配信の直前になった。

俺は防音室のデスクに座り、マイクの位置を調整する。
画面の向こうの待機枠には、すでに数万人のリスナーが固唾をのんで待っていた。
チャット欄は
¦ヤニカス美少女ってマジ?
¦いやガワは天使の輪あるし病みかわゴスロリやぞ
¦脳がバグりそう                 
                        と、早くも大荒れだ。
胃薬さん(マネージャー)
『あと1分で本番です! Asobiさん、準備はいいですか!?』
Discordの通話越しに、再びマネージャーちゃんの悲鳴に近い声が響く。

俺は手元にある百円ライターをカチカチと弄びながら、いつもの、ゆるーい声で返事をした。
Asobi
Asobi
はーい、大丈夫っすよー。いつでもいけまーす
お気に入りのタバコの箱をトントンと叩きながら、俺は不敵に笑う。
にじさんじに新しい風を、いや、ただのヤニの煙を吹き荒らしてやろう。

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