第16話

十五話 彼女は死んだのだ
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2026/01/21 14:07 更新






太宰さんに渡された鍵は、ずっしりと重かった










「敦くん、君が拾ってきた子の件はもういいよ。彼女なら、もう心配ない









(そっか、あの人はもう大丈夫なんだ
……どこか別の部屋で休んでるのかな。よかった……)











──それより、探偵社に新しい『お客さん』が来た。
しばらくの間、君がお客さんの食事と、
…生存確認を担当してくれたまえ」











 そう言って渡されたメモには、ただ一行。








 『接触禁止。不用意に触れれば、君でも再生が追いつかないほど焼けるよ』








 (……そんなに危ない人なのか?)








 敦は、お盆を持つ手が少し震えるのを抑えながら、医務室の前に立っていた。







 ドア越しでも分かる。








部屋の中の空気が、異常に「熱い」








物理的な温度というより、皮膚がチリチリと焼けるような、強烈なプレッシャー








この先にいる人は、強い






虎の本能であろうか、そう身体が理解をする




















(あの人が使ってた部屋だけど……






中には、もっと危ない状態の人がいるみたいだ)
























敦はおずおずと鍵を開け、中へ足を踏み入れた











カーテンが閉め切られた暗い部屋












そこにいたのは、膝を抱えて丸まり、床から十センチほど浮いたままの女性だった















 敦が、目の前の彼女を「自身が助けた女性」だとは気づいていない



















何故か












 一つは、先入観だ。














「彼女はもう大丈夫だ」と太宰に告げられたことで、













敦の思考から「この部屋に彼女がいる」という選択肢が消えていたこと













 そしてもう一つは、彼女自身の変貌だ














膝の間に深く顔を埋め、乱れた髪が顔を隠している













顔が、見えないのだ









 





また、発せられるプレッシャーも、以前に、敦を拒絶した際の爆発とは異なっていた
















中也に嫌われたかもしれない













そう思ってしまうのを辞められない

















そんな不安定な状態の彼女からは「事象」が溢れ出す









自分を責め、傷つける











それは客観的に見れば暴走












けれど、ある意味では自傷行為とも言えるだろう









彼の前から逃げ出した自分への嫌悪、中也を傷つけた罪悪感









それらが形を成し、自身の体から熱となって噴き出す








自分を責め、傷つけることでしか、彼女は今の自分を保てない
























 これら全て、太宰治の思惑通り































────あなたは、死んだことにする
















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