医務室の扉を閉めた瞬間、背中越しに少女の嗚咽が聞こえた
ボロボロになったあなたの服を見つめる
私は一つ溜息をつき、廊下の闇に溶け込むように歩き出した
彼女には「中也は君が死んだと思っている」と云ッたが、無論、そんなはずはない
だが、今二人が出会えば、待っているのは破滅だ
彼女の異能『事象の蓄積と解放』は、
自分自身をも焼き尽くす全方位型の自爆エネルギー
制御なんて、本来なら不可能な代物だ
「それを、中也だけが『銃弾』へと変えてみせていた」
本来、彼女の「事象」は全方向に無差別に拡散する
それを中也は、超高密度の重力で彼女の全身を包囲し、
文字通り「物理的な筒」の中に彼女を閉じ込めていた
爆発しようとする熱量を、中也が己の重力で無理やり抑え込む
中也が触れている箇所だけを『銃口』として開き、そこからのみエネルギーを噴出させる
いわば、中也の重力そのものが彼女の『銃身』
中也が自分の精神を削り、その体で熱量を導くことで、彼女の呪いは敵を貫く最強の弾丸へと昇華される
……全く、あんな面倒な真似、彼奴にしかできないよ
ふ、と口角が上がる
……もっとも、私の場合はわざわざ『銃身』なんて作ってあげなかったけれども
────かつての地下室
私は彼女を追い詰め、ただ限界まで溜め込ませたエネルギーを無差別に『爆発』させていただけだ
指向性なんて無くても、敵ごとすべてを消し炭にすれば問題ない
……おかげで、当時の彼女はいつも自分までボロボロに焼けていたけれど。
くす、と喉の奥で乾いた笑いが漏れる
中也のように、彼女に傷を負わせないように戦うなんて、非効率なことはしない
私にとっての彼女は、使い捨ての兵器で十分だったのだから
私は、手に持った服を薬品で溶かし、その火光を見つめた












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!