第15話

十四話 嫌われ役の独白
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2026/01/20 15:22 更新



医務室の扉を閉めた瞬間、背中越しに少女の嗚咽が聞こえた



ボロボロになったあなたの服を見つめる






太宰治
(……あぁ、嫌だね、嫌われ役ってのは)





私は一つ溜息をつき、廊下の闇に溶け込むように歩き出した


彼女には「中也は君が死んだと思っている」と云ッたが、無論、そんなはずはない



太宰治
(……彼奴が、遺体も確認せずに諦めるはずがないだろうに
今頃は街を一つ更地にする勢いで、君を捜しているはずだよ)




だが、今二人が出会えば、待っているのは破滅だ








彼女の異能『事象の蓄積と解放』は、



自分自身をも焼き尽くす全方位型の自爆エネルギー



制御なんて、本来なら不可能な代物だ







「それを、中也だけが『銃弾』へと変えてみせていた」









本来、彼女の「事象」は全方向に無差別に拡散する



それを中也は、超高密度の重力で彼女の全身を包囲し、



文字通り「物理的な筒」の中に彼女を閉じ込めていた



爆発しようとする熱量を、中也が己の重力で無理やり抑え込む



中也が触れている箇所だけを『銃口』として開き、そこからのみエネルギーを噴出させる



いわば、中也の重力そのものが彼女の『銃身』







中也が自分の精神を削り、その体で熱量を導くことで、彼女の呪いは敵を貫く最強の弾丸へと昇華される


……全く、あんな面倒な真似、彼奴にしかできないよ












ふ、と口角が上がる



……もっとも、私の場合はわざわざ『銃身』なんて作ってあげなかったけれども











────かつての地下室



私は彼女を追い詰め、ただ限界まで溜め込ませたエネルギーを無差別に『爆発』させていただけだ



指向性なんて無くても、敵ごとすべてを消し炭にすれば問題ない



……おかげで、当時の彼女はいつも自分までボロボロに焼けていたけれど。








 くす、と喉の奥で乾いた笑いが漏れる



中也のように、彼女に傷を負わせないように戦うなんて、非効率なことはしない



私にとっての彼女は、使い捨ての兵器で十分だったのだから









私は、手に持った服を薬品で溶かし、その火光を見つめた













太宰治
(さて、敦くんに頑張ってもらおうかな
……彼の『善意』が、彼女の『拒絶』をどこまで溶かせるか。期待しているよ)











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