2人を見送って、ユジンと一緒に店に戻る。
深夜0時を過ぎたからか客足もまばらだったので、早めに上がらせてもらうことにした。
後ろには相変わらずユジン。どうやら懐かれたらしい。
類友ってわけじゃないんですね!とキラキラの目で笑って言うユジン。
ユジンに悪気は全く無いのだろうが、相当失礼なことを言っている。
まぁ、ユジンはそういうキャラで、素もそういう性格なんだろう。
そんな彼は自分の思ったことを素直に言っただけ、なのに。
なぜかあなたの下の名前を綺麗と言うユジンにちょっと苛ついた。
俯いた俺を心配するように覗き込むユジン。
慌ててユジンから目を逸らすように顔を上げる。
あなたの下の名前から話題をすり替えるようにそう問いかけると、ユジンはぱっと顔を輝かせて頷いた。
キラキラと純粋そうな目を向けるユジンに戸惑ったけど、別に断る理由もない。
私服に着替えてタイムカードを切ってからユジンと店を出た。
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さっきまでユナと飲んでいた酒がようやく回ってきたのか、話し方がぽわぽわしてきたユジン。
酒量は考えて飲めって教わったはずなのに、、、。
正直面倒くさいけど、ここで置いてくほど俺も酷くない。
冷めてるとはいえ、人間の心を捨てたつもりはないし。
ため息をついて、フラフラのユジンを支える。
そのもちもちだという頬を軽く叩いて聞いてみてもユジンから返ってくるのは言葉にならない声。
これだから酔っ払いは嫌いなんだよ、、。
なにかの夢を見ているのか、寝言をこぼすユジン。
もう家は聞けないだろうし、仕方ない。
ユジンを背中におぶって自分の家までタクシーで帰ることにした。
ユジンは身長の割に軽くて驚いた。
そりゃそうか。彼は大人に見えてまだ21歳なんだから。
まだ本当なら大学生だ。なのにホストで働いている。
俺の背中の上であどけない顔で眠るユジンを見て、無意識に笑顔になる。
なんだか今日は俺、おかしいみたいだ。
ユジンに可愛さを覚えて、あなたの下の名前にドキドキさせられて。
もう一度ため息をついた後、俺はユジンを背負ったまま、到着したタクシーに乗り込んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。